【スモールステップで克服】残すのが怖くて外食が苦手なんです!

 皆様は外食は好きでしょうか?嫌いでしょうか?一般的には好きな方が多いかもしれませんが、もちろん苦手な方もいるでしょう。私もかつては一人での外食も苦手でした。「残したら作ってくれた人に申し訳ないな」とか「緊張してあまりおいしく食べられないし」 という思いから、満足に食事を楽しむことができませんでした。ですからわざわざいつもより高いお金を払って、外食をするのはもったいない!という気持ちでした。

 そして人とご飯に行く時も同じ気持ちでした。人と一緒だと「残したらもったいないと思われないかな」とか「楽しくないと思われないかな」といったさらなるプレッシャーがかかっていました。

 ですが外食や会食に行けるようになった今では、時間をかけても行けるようにする価値があったなと思います。やはり外食は便利ですし、何よ美味しい。「今日は頑張ったから、何か美味しいものを食べよう」と人生に少し潤いを与える存在でもあります。今では新しい街で美味しいお店を見つけようとするくらいに、外食は好きになりました。友達とのご飯も楽しみに出かけています。(コロナで機会は大きく減ってしまいましたが。。)

 本記事をご覧になっている方も、かつての私と同じように「残すのが怖くて、外食や会食が苦手なんです。。」というお悩みを抱えていませんか?そして「どうしてみんなは楽しく外食に行くのに私は楽しめないのかな?」とか「克服する方法はあるのかな?」とモヤモヤした気持ちを抱えていませんか?本記事ではこの「残すのが怖くて外食が苦手」という症状とその克服方法について徹底解説していきます。

この記事を書いている人

かずおかず

会食恐怖症・嘔吐恐怖症克服支援カウンセラーⓇ

「会食恐怖症」「嘔吐恐怖症」に苦しみ、日々の食事すら不能のどん底状態から、薬を使わず認知行動療法で自己治療を実践し克服。克服方法と、認知度の低い嘔吐恐怖症を広めるためにカウンセリングを行う。相談実績はのべ400件以上。日本初となる嘔吐恐怖症一般書籍「吐くのがこわいがなくなる本」(ダイヤモンド社) 制作協力。その活動は全国ラジオでも紹介される。病院への取材も行う。
「嘔吐恐怖症克服情報サイト【嘔吐恐怖症克服カレッジ】」や「嘔吐恐怖症克服プログラム【OPENERS】」等の克服支援サービスも多数運営。

この記事の内容

残すのが怖くて外食ができない!

 こういったお悩みは「外食恐怖症」と呼ばれます。また一人で食べるのは平気なんだけど、他の人が一緒だと食べられなくなるのは「会食恐怖症」と呼ばれています。私は会食恐怖症のカウンセラーとして、これまでたくさん、この悩みを抱えた方の声を聴いてきました。

 一般的に外食や会食と言うのは、誰にとっても楽しい娯楽という認識があります。インスタグラムを開けば、そこには美味しそうな料理の写真がたくさん掲載されています。ですがそうした写真を見ると、最初に考えてしまうのは「美味しそう!」では無く、「この量は食べきれるかな」とか「こんなお店の雰囲気だと緊張して食べられないだろうな」というもの。 そうしたプレッシャーが少しかかるだけでも、もうあまり食べたいとは思えなくなります。

 そしてそんな風に考えてしまう自分を責めてしまうこともしばしば。「みんなは平気で外食して、美味しいものを楽しんでいるのに、私はどうして普通に食べられないの?」外食恐怖症や会食恐怖症の方はこうしたお悩みを抱えているのです。(インスタグラムを見るたびに落ち込んでしまいます・・・という相談は実際にたくさんあったものです)

 とはいえ、こうした悩みを抱えた人が多いというのもまた事実です。私のような有志のカウンセラーでも1年あまりで、のべ300件以上の相談が届けられるほど悩んでいる方は多いのです。また最近では「外食恐怖症」や「会食恐怖症」といった言葉もメディアで取り上げられるようになりました。決してあなたひとりのお悩みではありませんから、自分を責める必要もないのです。

どうして外食・会食が苦手になるのか?

 ではどうして外食が苦手になってしまうのでしょうか?こうした心理状態は別に病的なものではありません。それは外食にまつわる過去の辛い経験が原因となっています。

 例えば幼少期から食べることが好きであり、頻繁に外食に行く家庭だったとしたら、「外食は美味しい!楽しい!」というポジティブな記憶として残るでしょう。こういう方は大人になっても外食はずっと好きのままでいられるでしょう。ですが逆に辛い経験をすることもあります。

 例えば幼少時に外食に行ったけれど、緊張してあまり食べられずに親に叱責されるといったケースが良くあります。私自身もそうで、もともと会食恐怖症の傾向があり、外食は苦手でした。親に連れていってもらっても、ほとんど食べることができず叱責された経験により、より外食が苦手になっていきました。

 他にもよくあるケースが「学校給食での完食指導」です。給食を残さず食べられるまで居残りさせられ、叱責されたり無理やり詰め込まれたりといった処罰を課せられます。このような経験は本人にとって非常に辛い経験となります。これも会食・外食が苦手になる大きな要因になります。

 幼少期にこのような経験があると、大人になっても苦手意識が残ります「残したらまた怒られる」「食べないとみんなに嫌われる」「気持ち悪くなったら大変なことになる」といった思いがストレス反応を引き起こして、余計に食べられない状態になってしまうのです。

 中でも一番大きいのはやはり「残したら怒られる」でしょう。一般的には特に日本では、「出されたものは全て食べなければいけない」という価値観があります。残している人を見たら、ついつい人は「残したらもったいないよ」とか「食べないと大きくなれないよ」とか言ってしまうものです。また自分ひとりでも「残したらもったいない」と思ってしまうものです。

 この価値観自体は素晴らしいものだと思いますが、外食・会食恐怖症の人にとっては必ずしも正しくはありません。このようにひとたび「食べなければいけない」というプレッシャーがかかると余計に食べることは出来ません。 本人は食べたいと思っているのに・・・

  • 過去に食べられなくて、辛い経験をした。みんなに怒られた↓
  • 「食べなきゃ」というプレッシャーで余計に食べられない↓
  • 「もったいない」と自分で思ったり、周りから「残すな!」と言われる↓
  • そしてまたプレッシャーへ・・・

 このような悪循環に陥ってしまいます。「プレッシャーがかかるだけで、食べられなくなるなんて、自分の心が弱いからなんでしょうか?」こんなことを相談される方もいます。確かにプレッシャーがあっても、大抵のことはなんとかこなせますからね。人前で演奏したり、試験を受けたり、演説したりもできます。ですが「食べること」に関しては、これは全く当てはまりません。プレッシャーがかかると誰でも食べられなくなるのです。

プレッシャーは「闘争・逃走反応」を引き起こす

 プレッシャーがかかると「闘争・逃走反応」と呼ばれる生理現象が起きます。闘争・逃走反応は私達の体に元来備わっている、人間が危機に瀕した時に発動する防御メカニズムです。

 私達生物は何か自分の身に脅威が迫った時、その脅威を排除するために闘うか、それとも脅威から逃げ出すかの選択をしなければなりません。そして闘うにせよ逃げるにせよ、身体はそれに備える必要があります。脅威が迫ると闘争・逃走反応が起こります。闘う・逃げるといった⾏動が素早くできるように、心拍数を上げて筋⾁に⾎流を巡らせます。

 緊張するとドキドキして、冷や汗かきますよね︖これは脳が脅威に対して体を闘争・逃走モードにしているからなのです。よく「火事場の⾺⿅⼒」なんて言ったりしますけど、あれは本当に「闘争・逃走反応」によって普段よりも⼒が出るようになっているのです。

 身に脅威が迫った時は「闘争・逃走反応」は役⽴つものです。しかし闘う・逃げることに体のエネルギーを集中できるよう、他の不要不急の機能は全て停止してしまうのです特に「食べる」という行為は身に脅威が迫った時に最も不要な行為なので、食べることに関わる機能は全部停止してしまいます。唾液はでなくなり、喉はしまり、胃はうまく広がらず痙攣した状態になってしまいます。

 緊張して食べられなくなるのは私だけ︖と考えていた方もいるかもしれません。しかし緊張して「闘争・逃走反応」が起きている時に食べられないのは当たり前です。体が食べ物を受け入れる状態でないのですから。気持ちの問題ではなく、物理的に食べることが難しくなっているのです。

 つまり苦手な外食や会食を克服するとは、「残さず食べなければいけない」 をはじめとする自分へのプレッシャーを徐々に手放していくことです。

外食が苦手!は克服できる

 では外食に苦手意識をもってしまった人は、もう外食を楽しめないかと言えば、もちろんそんなことはありません。人の意識は環境や行動によって少しづつ変化していくものです。一生固定されるものではありません。克服したい意思があれば、克服は可能なのです。

 ではどのように克服していけば良いのでしょうか?外食に行かずに苦手意識が無くなることはありません。一番確実な方法は、自分が挑戦できる範囲で徐々に外食に挑戦していく、徐々に楽しめるようになっていくことです。

 この徐々に慣らしていく方法は心理学の分野では「認知行動療法」とも呼ばれ、外食だけでなく、様々な苦手意識や不安に起因する問題への治療法として用いられています。とはいえ難しい知識は必要ありません。自分で取り組み内容を決めて、今日からチャレンジできる治療法です。

 ですがやみくもにチャレンジすれば良いものでもありません。ここからは「残すのが怖い」に対して効果的な認知行動療法の取り組み方をお伝えしたいと思います。

克服はスモールステップで

 挑戦すると言っても、いきなり高価なレストランでの食事というのは敷居が高いでしょう。まずは自分のできることから始めて、そこからスモールステップで徐々にレベルを上げていくのが良いでしょう。

 例えば最初はカフェでお菓子を食べてみる。それを何度か繰り返して、リラックスしてお菓子を食べられるようになったら、今度はサンドイッチを食べてみる。カフェで食事が出来るようになったら、今度はチェーン店でうどんを一杯食べてみる。そしてだんだん普通のメニューにも挑戦していく。敷居の高くない店で食べられるようになったら、少し個人店にも挑戦してみる・・・。

 このようなスモールステップの組み立てはあくまでも一例です。最初から何かを食べるのは抵抗があるという場合には、飲み物だけでも大丈夫です。これは自分が外食恐怖症だった時に実際行った認知行動療法のステップです。外で何かを口にするのは本当に苦手でしたが、このようなステップを踏んでいくことで、だんだん慣れていきました。

 こんなスモールステップで普通に外食できるようになるの?と思われるかもしれませんが、こうした小さい体験の積み重ねによって、確実に人間の意識も良い方向に変わっていきます。どんなにレベルが低くても、まずは行動を決めて実践することが大事です

 でも行動を決めたら後はチャレンジするだけ!ガンガン外食や会食に挑戦して頑張って食べて自信をつけていこう・・・という訳ではないんです。

「残すのが怖い」には「残す練習」が効果的

 先に述べたプレッシャーによる闘争・逃走反応はプレッシャーが大きくなる程に強くなります。つまり「全然食べられなかったらどうしよう」「残したらどうしよう」ということが起きてほしくないあまりに、「食べなければ」と無理に自分をコントロールしようとします。ですがこれもより大きなプレッシャーをかける原因になります。

 私自身も同じように、当時は「食べなければ」ということばかり考えていました。なんとか自分に「落ち着いてやれば大丈夫だよ」とか「お腹が減っていれば食べられるよ」と言った言葉をかけて、安心感を得ようとしていました。しかし効果は全くの逆で、より食べられないことに対するプレッシャーが増すばかりでした。

 プレッシャーは自分の気持ちでコントロールして、抑えようとするほどに強くなってしまいます。 闘争・逃走反応といった反応は、人間の生存に必要な防御反応なので、自分の気持ちではコントロールが出来ません。さらに人間には考えたくないことほど考えてしまう性質があります。つまり「食べなければ練習にならない」とか「大丈夫、私は食べれる食べれる」と自分に言い聞かせるのは逆効果です。これではせっかくチャレンジしても効果的な認知行動療法にはなりません。

 逆に言えばコントロールしようとしない、プレッシャーを抑えようとしなければプレッシャーが今よりも強くなる事はありません。つまり外食・会食で食べられるようになるには、「残しても大丈夫と思えるようになる」という視点で改善していく方が良いのですね!「残さず食べられるから大丈夫」と自信をつけていくのとは真逆なのです。もう一度協調しますが必要なのは「食べられる自信」ではなく、「残しても大丈夫と思える」なのです。

 ひとたび「残してもいいんだ」と自分の中で納得できれば、外食へのプレッシャーは一気に減ります。すると食べられる量も増えてくるし、食べられる量だけ楽しめばいいという姿勢も身に着きます。すると外食への苦手意識も減っていくのです。そのための練習は「敢えて残してみる」というものです。

残すと残すのが怖くなくなる

 なぜ残すことが、残すことへのプレッシャーを減らす練習になるのでしょうか?残してしまったら、次も残すのが不安になるのでは?と思われる方もいるでしょう。しかし不安を軽減する一番の方法は実際に不安に飛び込んでみることなのですね。というのも人間は実態が分からないことに一番不安を感じる性質があるからです。実際に不安を体験すると、次の不安はどんどん軽減されていくのですね。

 この背景があるからこそ、認知行動療法という治療法は成立するのです。また実際私も「たくさん残す経験をすること」で残すことへの抵抗感や罪悪感を減らしてきました。「前回も残しちゃったけど何とかなったし、今回も最悪残していいや」という考え方にだんだん変わってきました。残すとネガティブな経験として残るかと思いきや、そういう経験もだんだんネガティブと感じなくなっていくのです。

 さらに実際に残してみることで、「残すのはいけないことではない」という事実の確認もできます。実際に残しても周りの反応が実は寛容だったり、あまり気にしていないことがほとんどです。実際に残してこの事実を確認することでもプレッシャーが軽減されていきます。そもそも外食や会食への苦手意識はないけど、食事は結構残すという方は多いです。そういう方は自分が楽しめる分だけ食べるのが一番と思えているからでしょう。

 そうは言っても「残すと怒られるのでは」と思う方もいるでしょう。中には残したことにいろいろ言ってくる方もいるかもしれません。でもそれもまた練習の機会なのです。もし何か言ってくる人がいても、その時は適切な自己主張をして自分を守る練習ができます。適切な自己主張については以下もご覧ください。これもまた残すことに対するプレッシャーを減らすのに効果的です。

 このように「残してはいけない」のプレッシャーを減らすには、敢えて残す練習が効果的なのです。でもいきなり残そう!ともなかなか思い切れないですよね。なので最初は「もし残してもそれが練習になっている」ということだけでも覚えて、外食や会食にチャレンジしていきましょう。残しても大丈夫です。それがいつか自分を助ける経験になります。

おわりに

 本記事の内容をまとめます。

  • 外食が苦手な人は結構いる。
  • それは自分のせいでは無く、ただ外食にまつわる辛い経験があっただけ。
  • プレッシャーがかかると人は物理的に食べられなくなる。
  • 外食恐怖症・会食恐怖症は認知行動療法で改善できる!
  • 「残したらどうしよう」には敢えて残す練習が効果的

 本記事では「残すのが怖くて外食が苦手」という症状とその克服方法について徹底解説してきました。 苦手を克服するためにチャレンジして、頑張って食べなければと思っていませんでしたか?実は必要なのは「食べられる自信」ではなく、「残しても大丈夫と思える」なのです。

 自信とは言い換えれば、できなければ自信を失うというプレッシャーを自分にかけていることにもなります。ですから「敢えて残す練習」も取り入れて、「残しても大丈夫なんだ、私はそれでいいんだ」と心から思える姿を目指していきましょう。

 本サイト「嘔吐恐怖症克服カレッジ」では今後も外食恐怖症・会食恐怖症・嘔吐恐怖症の克服に役立つ情報をお届けしていきますので、お楽しみに。それでは最後までお読みいただきありがとうございました。

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