不安で当たり前

 会食恐怖症・嘔吐恐怖症克服メールマガジン(会マグ)を受講頂き、ありがとうございます。 第七回の講義は「前向きな考え方1」です。前回は前向きな行動についてお話しました。今回は前向きな考え方についてお話します。前向きな考え方というよりは、不安と上手に付き合える方法を学ぶ、というのが正しい表現かもしれません。このトピックは今回と次回の2回に分けて講義します。今回は「不安とはどういうものか」次回は「不安を受け入れて前向きに考える」についてお話していきますね!

 皆様は不安どのようなものと捉えているでしょうか?会食恐怖症・嘔吐恐怖症の人の場合ですと、「もし食べないことを人に指摘されたらどうしよう」とか「食べている途中で気持ち悪くなったらどうしよう」みたいな考え、これが不安です。そして皆様もご経験があると思いますが、こうした不安に捉われ続けると、より不安が大きくなったり、症状が出てしまったりします。そのため、ほとんどの人は「不安をきれいさっぱり消し去りたい!」と考えているでしょう。では本当に不安は悪いものなのでしょうか?

 結論から言えば不安自体は決して悪いものではありません。そしてそれをきれいさっぱり消し去る方法もありません。

 なぜなら不安は人間が生き残るために必要なものとして、進化の過程でどんどん発達させてきたものだからです。今でこそ私たちは安全に衣食住を確保して生きていますが、昔の人間は常に過酷な状況に置かれていました。野生生物や自然災害に襲われて命を落とすことも多い環境だったのです。そんな時不安は生存に非常に役立ちました。「あの黒い影はなんだろう?ひょっとして熊じゃないか・・・?近づくと食べられる!」「この先食料が手に入らないかもしれない、今のうちになんとかしなければ・・・!」って感じで常に命の心配をして先に備えることが生存に必要だったのです。この不安のおかげで人間は今日まで生きてこれたわけです。

 不安は人間の生存に役立つものでした。現代は常に命の心配をしなくても生きれるようになりました。しかし時代は変わっても人間が備えている不安自体は変わっていません。命の心配をするかわりに、自分の理想とする人生の障害になりそうなものは全て心配するようになりました。

 例えば「明日のテスト・面接うまくいくかな・・・」「あの人に嫌われてないかな・・・」などなど。会食恐怖症・嘔吐恐怖症の人の場合、放置しても死ぬわけでは無いが、就職・恋愛・人間関係の障害になる、それによって理想の人生が遠のいていく可能性があるわけです。ですから本能的に会食恐怖症・嘔吐恐怖症に対して不安を持ちます。これは極めて自然な人間の感情と言えましょう。

不安が問題になる原因

 今日まで私たちの生存を助けてくれた不安ですが、現代社会ではこの不安の存在を問題視する傾向があります。皆様もそうはいっても不安は無いほうが良い!と思いますよね。ではなぜ不安は問題視されるのでしょうか?その理由は2つあります。

  • 不安だと物事がうまくいかない
  • 幸福が普通であり不安は異常な状態

 このような不安にまつわる誤解があります。不安だと物事がうまくいかない、会食恐怖症・嘔吐恐怖症の場合なら症状が出てしまうということですが、これは「慢性的に不安に捉われ続け、不安をどんどん拡大してしまった」場合に限ります。不安を大きくしすぎるとストレスになり、パフォーマンスにも影響してしまいますが、適度な不安は人間を行動的にし、より良いパフォーマンスを発揮させるのに役立ちます。

 何事の挑戦にも不安はつきものです。会食恐怖症・嘔吐恐怖症の克服にも不安が伴います。不安をきれいさっぱり消す方法はありませんが、その必要もないのです。不安と上手に付き合う方法を身に着けていけば、不安があっても物事をうまく進めることはできるのです。(もし不安をきれいさっぱり消す方法があれば、それは大変問題です。行動に全く不安が無くなれば、そこに潜むリスクを予測できないということですから、人間はあっという間に滅びてしまうでしょう。)

 もう一つの誤解が、幸福が普通であり不安は異常な状態であるという考えです。近年インターネットやSNSの普及によりこの考えがより強まりました。そこで目にするのは基本的には表面的な他人の幸福です。だれでも他人の目にさらされる部分では、自分の幸福な部分だけを強調します。その下にあるネガティブな部分を目にすることはありません。これにより、あたかも自分以外の人間は幸福であり、それが普通の状態であるという誤解につながります。

 本当に幸福は普通の状態でしょうか?確かに現代社会は物質的には大変豊かですので、誰しも幸福を手にしているかもしれませんね。では実際の統計を見てみましょう。こちらは米国の数字ではありますが、

  • 毎年成人人口の30%近くが何らかの精神疾患と診断されている
  • 世界保健機構は2020年にはうつは2番目に重大な疾病になると予想している
  • 5人に1人が障害で一度はうつになる
  • さらに4人に1人はドラッグ・アルコール依存になる。米国だけで2000万人のアルコール依存症患者が存在する
  • 2人に1人が人生のある時期、真剣に自殺を考え、2週間以上その状態に悩まされる

 私達はひらすら幸福を追求しているはずなのに、その実情は全く幸福からは遠いものです。ですがこれは自然なことです。幸福を追求するほどに不安に対する抵抗も生まれるからです。不安を抱くことは極めて自然な事にも関わらず「こんな不安なのは自分だけだ!」「もっと幸福にならないといけない!」とひたすら抵抗してしまいます。こうした不安はより不安を増幅させるので、結果的にうつ病や依存症に陥ってしまうわけです。

不安は消すより受け入れる

 不安があることは人間として極めて自然なことです。不安を完全に消すことはできません。ですが上手に付き合うことはできます。

 それは不安を受け入れるということです。不安があることは自然であり、不安自体は悪いものではありません。不安に対して「不安で普通だよね」と抵抗をしなければ問題にはならないのです。

 抵抗を続けていれば、いつか不安に打ち勝つことはできるでしょうか?「こんな不安ではいけない、もっとポジティブに考えなければ」と意思の力でコントロールしようとすれば不安は消えるでしょうか?それも不可能なのです。先にお話したように、人間は考えたくないことほど、より強く考えてしまうという性質に加えて、無理にポジティブに考えてもそれを覆す不安も考えてしまうという性質があるからです。不安に抵抗することは、勝ち目のない戦いの中で、自分を消耗し続けるだけなのです。 

 このことを理解した上で、不安を受け入れて、拡大解釈して大きくしないようにすれば不安と上手に付き合うことができます。そうすれば適度に自分を行動的にする良きパートナーとなっていきます。

おわりに

 今回の講義では前向きな考え方として、不安とはどういうものかについてお伝えしました。不安に対するイメージが少しでも変わったのではないでしょうか。今後の人生でも不安は避けて通れません。でしたら早いうちにその付き合い方を学ぶのは良い事ですよね!次回は「前向きな考え方2 不安を受け入れて前向きに考える」について講義します。

 感想等も是非LINEチャットに書き込んでみてくださいね。自分の感想を書く、つまりアウトプットをすることでより理解を深めることができます。理解が深まると行動にもつながりやすくなりますよ!それでは最後までお読みいただきありがとうございました。

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