回避行動を手放す

 いよいよ実践的な嘔吐恐怖症の克服方法についてお伝えしていきますね。これまでは嘔吐恐怖症にももちろん有効なのですが、それ以外の不安や自己批判に役立つ技術をたくさん小迂回してきました。

 これからお伝えしていく回避行動を手放したり、認知行動療法の実践は嘔吐恐怖症の克服に欠かせません。

 ですがこのOPENERSでは敢えて、こちらの方法を後ろに回して、先にしっかと現状を受け入れて、しなやかに前に進んでいくためのマインド養成に力を入れてきました。こうした技術を最初にお伝えしたのは、理由があります。

 それは先にしっかりとした基本のマインドが無ければ、回避行動を手放したり、認知行動療法に取り組むことが逆効果になってしまう場合もあるからです。

レジリエンスを強化していく

 例えば会食に臨み気持ち悪くなってしまい、あまり食べることが出来なかったとします。克服の過程で自分が望むような結果にならない事は100%起こります。(そうでなけば嘔吐恐怖症は既に克服されているという事になります)

 まず克服しようと、実際に会食に臨むだけでも相当勇気がいることです。まずそこを褒めるべきです。また結果に関わらず、認知行動療法は効果があります。もし食べることができたら、それは自信につながりますし、もし食べることが出来なくても、それは食べることが出来ない不安を低減することにもつながるのです。

 そういう食べられないという経験をするほどに、食べられないことに対する不安は減っていくのです。これは自分が不安に思っている事に、敢えて飛び込むほどに不安は低減されていくという人間の性質によるものです。

 いずれにしても会食の場での様々な経験は全て克服につながっていくのです。しかし単純に結果だけを評価していてはネガティブな判断しか下すことができません。

こころの処方箋

 こうなるとなかなか次の認知行動療法に向かうのは難しくなります。そこでこれまで培ってきたようなマインドが必要になるわけです。もし食べることが出来ずに、大変落ち込み、自己批判が止まらない状況になったとします。こんな時でも最善策は一つです。

 今の状況にマインドフルネスになり、自分にセルフコンパッションを向けることです。

「あ~食べられなかったから、自分を腹立たしく思う気持ちがあるな~、でも他の人も同じ状況だったら同じように考えるよな~、でもこれは自分の良くしたい!という気持ちの裏返しだからしょうがないな~、今日は勇気をだして行けたことがすごいよな~、それにちょっとだけ食べられたしな~、次はもうちょっと味を感じたり、会話を楽しむことを意識してみようかな~」

 これが自分に対してとるべき態度の一例でしょう。起きたことを冷静に受け止め、状況を勝手に悪く解釈することもなく、次にむけて自分を受け入れて励ますことが出来ていますよね?

 これは今まで培ってきた技術が無いと、なかなかこういう態度にはなれないでしょう。このため瞑想とセルフコンパッションを中心にこれまでお伝えしてきたのです。

 皆様もこれから回避行動を手放したり、認知行動療法に取り組む中で、うまくいかない!と感じることがたくさんありますが、その度にこの心の処方箋を活用して、自分を励ましていきましょう。

では今日の本題の回避行動に入っていきますね!

スモールステップで

 嘔吐恐怖が強くなってくると、嘔吐恐怖を避けるために「回避⾏動」と呼ば れる生活の幅を狭める⾏動をとってしまいます。「食べた後は出かけない」 「常にビニール袋を持ち歩く」「会食に⾏かない」等です。こうした⾏為で 「吐いたらどうしよう」と不安になる場面は減らせますが、日常生活に支障を きたしますし、回避⾏動がとれなかった場合に嘔吐恐怖をより強めてしまうこ とになります。

 嘔吐恐怖症の知⾒が無いうちはこの回避⾏動を知らず知らずの うちにとってしまい、悪化させてしまうケースがあります。 克服のためにはひとつひとつ回避⾏動を⼿放していくことが必要になります。

 例えば「食べた直後は怖くて出かけられない」という症状を抱えている方 の場合、食べた直後に「家から一歩出てみる」→「近くの公園まで⾏ってみ る」→「電⾞に一駅だけ乗ってみる」というようなスモールステップを積むこ とで、食べた直後は出かけないという回避⾏動をだんだん⼿放して⾏きます。

 ビニール袋を⼿放せない人は、「ずっと持っている」→「鞄に入れておく」→ 「鞄の一番取り出しにくい所に入れておく」→「もっと⼩さい袋にする」とい うようなスモールステップになります。 回避⾏動を少しずつ⼿放し、回避⾏動をしなくても大丈夫なんだ︕という経 験を積んでいきましょう。

回避行動を手放す=認知行動療法

 ですが回避⾏動はすぐに全部なくさなければいけな いものではありません。回避⾏動がなければ、どうしても怖さを感じる場合は 無理をする必要はありません。「なしでもいけるかも・・・」という自分がで きる範囲から初めて、徐々になくしていくのが良いでしょう。

 回避行動を手放す=認知行動療法であると言えますね。

 自分が知らず知らずのうちにとっている回避行動をなくしていくことが、認知行動療法に取り組むということなのです。