こんにちは!OPENERSです。今回は暴露療法についての講義をお届けします。

 「暴露療法」とは「他人が吐くことや吐しゃ物を見るのが怖い」タイプの嘔吐恐怖症の方に効果がある治療法です。

 このタイプの嘔吐恐怖症の方は、嘔吐にまつわる物(他人の吐く姿、吐く音、吐しゃ物、またはそれに関連する文字やイラスト)に恐怖を感じて、日常生活に支障が出る場合があります。吐く人や吐しゃ物に遭遇する不安から、夜の街に出かけられなくなったり、映画やドラマの嘔吐シーン等で、大きく動揺してしまったりすることもあります。

 特にいきなりテレビとかで芸能人が戻すシーンとかがあると、「わぁ~~~~っつ」ってなりますよね。

 このタイプの症状も決して珍しいものではありません。「自分が吐くのが怖いタイプの嘔吐恐怖症」でも多くの方が、この症状も抱えています。

 この手の症状の方がよく周りから言われてしまうのが「吐くのは誰でも嫌でしょ」とか「吐しゃ物を見るのは誰でも嫌でしょ」などの意見。もちろんこれらはその通りでしょう。進んでそのようなものを見たがる人はいないでしょう。

 ですがこの「他人が吐くことや吐しゃ物を見るのが怖い」タイプの嘔吐恐怖症は単に「嫌な気持ちになった」だけでは済まない症状を指します。嘔吐にまつわる物を目撃すると、激しく動揺してしまったり、嘔吐のシーンがずっと頭から離れなかったり、激しく落ち込んで食欲も元気もない日が何日も続く・・・といったように日常生活にまで支障をきたす場合を指します。

回避行動で恐怖が強化される

 これまで回避行動で恐怖が強化されていき、それを阻止するために認知行動療法が必要であることをお伝えしてきました。

 そしてこれは「他人が吐くことや吐しゃ物を見るのが怖い」タイプの嘔吐恐怖症でも同様です。

 このタイプの回避行動も様々なものがあります。「具合が悪そうな人がいるとすぐに避ける」「具合の悪い人や吐しゃ物に遭遇する可能性があるので、夜の街は避ける」「子供の嘔吐処理ができない」「テレビや映画であっても嘔吐のシーンは(できれば)絶対見ないようにする」

 もちろん進んで嘔吐にまつわる事象に遭遇したい人はいないでしょうから、それらを避けるのは自然な行為かもしれません。ですが既に「他人が吐くことや吐しゃ物を見るのが怖い」タイプの嘔吐恐怖症という自覚があり、上記のような回避行動によって日常に支障が出ている場合はやはり認知行動療法をやっていく必要があります。

 嘔吐にまつわる事象は人生にはつきものです。嘔吐は人間の最も基本的な生理現象のひとつですからね。それらを避け続けるとやはり、嘔吐への恐怖がますます強化されてしまうことになります。

 そしてこの手のタイプの嘔吐恐怖症にとって、認知行動療法に相当するのが暴露療法と呼ばれる治療法です。

暴露療法とは

 暴露療法は恐怖対象(他人の吐く姿、吐く音、吐しゃ物、またはそれに関連する文字やイラストや画像)に敢えて晒されることで、恐怖に適応していく(慣れていく)治療法です。暴露療法は既に効果のある治療法として確立されていますので、実際に暴露療法を行っているクリニックもあります。一般的には恐怖対象が登場する動画や画像を視聴します。

 実際に私もクリニックで暴露療法に使われているコンテンツを見せてもらったことがあります。文字→イラスト→本物の画像→動画と言った感じで徐々に恐怖レベルを上げていき、恐怖対象に慣れていく治療法です。

 暴露療法は認知行動療法とは違い、自分の好きなタイミングで好きなだけ自己治療をすることができます。そのため認知行動療法よりも効果が早く期待できます。また暴露療法により「嘔吐そのもの」に対する全体的な恐怖イメージを軽減することが出来ますので、「自分が吐くのが怖いタイプの嘔吐恐怖症」の治療にも寄与します。

 一方で暴露療法を行っているクリニックはまだまだ少なく、治療費も決して安くはないのも現状です。クリニックに暴露療法のコンテンツを提供してもらう必要があるので、何度もクリニックに通い続ける必要があります。

 また実際に病院で暴露療法に取り組まれた方からは「難易度が高く挫折してしまった」とのお話を伺ったこともあります。YOUTUBE等で嘔吐にまつわる動画を視聴することも出来ますが、オススメはしません。暴露療法用に設計された動画や画像でなければ、恐怖レベルが徐々に上がっていくようには出来ていません。適切な暴露療法とはならないからです。

暴露療法をやった方が良い人・必要ない人

 では嘔吐にまつわる物は全然平気な人が暴露療法に取り組むと何か効果はあるのでしょうか?結論を言えばありません。 暴露療法をやった方が良いのは以下の方となります。

  • 嘔吐にまつわる物が怖い人。人が吐いてるのを見るのが怖くて飲み会に行けない。夜の街に行けない。
  • テレビやドラマの嘔吐シーンで大きく動揺してしまう人。
  • 上記の症状から日常生活に支障が出ている人。

 そして以下の方は暴露療法の対象とはなりませんので、今回の講義、および今後の暴露療法の講義はスキップしても問題ありません。

  • 吐しゃ物に遭遇したり、テレビやドラマの嘔吐シーンは全然平気な人。
  • 平気ではないが、不快に感じても特に日常生活に影響は出ていない人。

暴露療法動画プログラム

 本プログラムでは「他人が吐くことや吐しゃ物を見るのが怖い」タイプの嘔吐恐怖症の方が暴露療法を実践いただける「暴露療法動画プログラム」を用意しています。本動画プログラムは暴露療法の効果を上げるのに必要な「徐々に恐怖レベルが上がる」「最低20分は視聴を続ける」という要素を踏襲して設計しています。

 また「難易度が高くて、挑戦できない」という人が出ないように、恐怖レベルをさらにスモールステップに分解し、「初級動画」と「中級動画」に分けています。(それぞれ30分の動画です。)「初級動画」は嘔吐にまつわる文字やイラストなど非常に難易度が低く、どなたでも挑戦頂けます。「中級動画」はそれから少しレベルを上げ、暴露療法を行っているクリニックで使用されているものとほぼ同等の内容で作成しています。自分のレベルに応じて、適宜暴露療法をお試しいただけます。

 暴露療法に取り組んで頂くには、このOPENERSでお伝えする技術を先に学んで頂く必要がありますので、暴露療法動画はプログラムの後半でお届けしていきます。

 「恐怖を避けていては治らないのは分かってるけど、どうしたらいいのか分からない」という「他人が吐くことや吐しゃ物を見るのが怖い」タイプ嘔吐恐怖症の方にとっては有効な最初のステップとなります。是非ご活用下さい。

暴露療法の壁

 暴露療法はただ嘔吐にまつわる動画を見ていれば、どんどん良くなっていくというほど単純ではありません。認知行動療法と同じくやはり行動の前後には必ず不快な症状や不安が出てきます。

 人間は恐怖を感じた時に以下の反応を示すことをお伝えしました。

  • 身体の変化 ← しんどい
    例:ドキドキ、冷や汗、ソワソワ、気持ち悪さ、吐き気、胃痛などの身体症状
  • 考え方の変化 ← しんどい
    例:「怖い」「もう見たくない」「やっぱり自分は治らない」
  • 行動の変化
    例:嘔吐にまつわるものを徹底的に避ける

 ひとたび行動を起こそうとすれば、いろんな壁があります。「暴露療法で余計に悪くなったらどうしよう」という予期不安。恐怖のスイッチが入ることで起きるパニック。そして暴露療法が自分の思う通りに行かなかった時の「やっぱり自分は治らないんだ・・・」という行動後の落ち込み。

 特に暴露療法は治療中に恐怖を感じると、そこで治療を止めてしまい、自分には効果がないと思い込んでしまって続かないケースが良くあります。

 暴露療法も認知行動療法と同じです。やり方を詳しく知るというよりも、いかにして不快な症状や不安をケアしていくかの方が大事なんです。こうした症状や感情をケアする方法を知らないまま暴露療法に取り組んでも、やはりあまり効果は上がりません。

 ここでも瞑想によるマインドフルネスやセルフコンパッションという最新の心理技術が暴露療法に活きてきます。これらを活用した正しい暴露療法への取り組み方を、暴露療法動画プログラムと併せてお伝えしますのでお楽しみに!

 今回のワークはありません。