今回も瞑想の為だけの時間をとって行う「フォーマルな瞑想」について紹介します。瞑想を習慣にするなら、静座瞑想もとともに、このフォーマルな瞑想を実践していく必要があります。まとまった時間も必要になりますが、一度習慣にしてしまえばお風呂や歯磨きといった日常習慣と同じく、「やならいとスッキリしない」という状態になるくらい、心地よいものです。

 今回紹介するフォーマルな瞑想法は「ボディスキャン」です。

 このキーワードを聞くのはおそらく初めてかと思いますが、ボディスキャンはフォーマルな瞑想の中でも最も始めやすい瞑想です。もともと瞑想の基本はただ座ってひたすら呼吸に集中する静座瞑想でした。しかし瞑想治療を受ける慢性痛を抱えた方の中には腰痛持ちで、じっと座っていることが出来ない方もいました。そんな方でも瞑想が行えるように開発されたのがボディスキャンです。

 ただ仰向けに寝ることができればボディスキャンは実践できますので、体が疲れ切っている時や体調が悪い時でも実践できます。またボディスキャンは長時間の難易度の高い瞑想への足掛かりにもなります。ここでしっかりとフォーマルな瞑想の基本感覚を身に着けて頂くと、長時間の瞑想への足掛かりになるでしょう。

初心者は静座瞑想よりもボディスキャンを中心に

 前回フォーマルな瞑想として、静座瞑想をお伝えしました。こちらを1日10分間取り組んで頂くことを推奨しています。

 ですが静座瞑想は長時間瞑想が続けられるようになるまでには、訓練も要します。その点ボディスキャンは体が痛くないよう仰向けで行いますし、呼吸の際にお腹や胸の動きもしっかり感じられますので、長時間でも集中を維持しやすくなっています。

 最初から静座瞑想の方が自分には合っている気がしている方は、ボディスキャンは必ずやらないといけないものではありません。ですがボディスキャンの方が長く集中できる方は、まずはこちらを中心にやっていきましょう。

 それでは具体的なやり方を説明していきますね。

実践ボディスキャン

 ボディスキャンは45分間の瞑想です。途中で邪魔が入ることが無いようにしっかりと時間を確保してください。

 まずベッドや布団の上にあおむけになります。寒さを感じるようなら毛布を掛けて下さい。ボディスキャンも目を閉じても開けても、どちらでも大丈夫です。目を閉じると寝てしまうという方は天井の1点を見つめるようにしましょう。まぶしい時はアイマスクをするのも良いでしょう。

 ボディスキャンの基本も呼吸に集中することです。まずは「3分間呼吸法」と同じように呼吸に集中してください。思考がさまよいだしたら、また呼吸に意識を戻すようにしてください。

 そしてボディスキャンでは呼吸以外に、自分の体の触覚に対して意識を向けます。これから体の各部位に対して意識を集中させていきます。まずは右の足先から始めていきましょう。穏やかな呼吸をしながら足先の感覚に集中していきます。

 つま先から。どんな感じがするでしょうか?冷たさを感じますか?温かさを感じますか?空気が足先に触れる感じがありますか?

 ゆっくり足先から足の裏や甲に感覚を移動させていきますが、その部位でもやることは同じです。その場所で感じる感覚を全力で感じ取ります。思考がさまよいだしたら、また一度呼吸に意識を戻してから、再び足の感覚に集中を戻します。徐々に感覚を集中する場所を移動させながら、呼吸を続けます。そして3分間かけて、右足の各部位(つま先、足裏、すね、ふともも)の感覚を確かめます。これで一つの部位が完了です。

 単に部位の感覚に集中よりも、その部位から空気を取り込んで、その部位から空気を吐き出すというイメージを持つとやりやすいようです。自分の足裏の感覚に集中したいなら、そこに穴が開いていて、そこから空気を取り入れて、そこから吐き出していくという感覚ですね。胸の感覚に集中したいなら、胸のまわりに穴が開いていて、そこから空気を取り入れて、また吐き出していくという感覚をイメージします。

 体の各部位は以下の通りです。各箇所で3分間感覚を集中させて次の部位に移ります。

「右足」「左足」「腰」「お腹」「背中」「胸」「胴回り全体」「両手」「肩」「首」「喉」「顔の表」「後頭部」「頭頂部」「体全体」

 簡単に言えば、寝ながら行う3分間呼吸法x15セット、呼吸だけでなく体の部位の感覚にも集中する、という瞑想になります。

 ほとんどの部位はベッドや枕に触れていますので、その触れているという感覚が基本になるでしょう。それ以外にもどんな感覚がするか?自分で探ってみて下さい。個人的にはそれぞれ以下の感覚に集中すると続けやすいと思いましたので挙げてみました!やってみると「全く何も感じない部位」も出てきます。そこでは「全く何も感じない」という感覚に集中するようにしましょう。

各部位で集中しやすい感覚

 もちろん個人によって正解は違いますが、感覚がより感じやすい部分があります。以下の部分に感覚を集中させると、より長くできると思います。

  • 「足」足はつま先、足裏、足の甲、くるぶし、アキレスけん、脛、太もも・・・と順番に感覚を移動していきます。その箇所に意識を置いて、穴を作って呼吸するイメージで行いましょう。
  • 「腰」呼吸のたびに腰がすくんだり、うねったりしますがその感覚に集中します。
  • 「お腹」呼吸のたびに最もよく上下に動きますので、容易に感覚に集中できるでしょう。
  • 「背中」「腰」と似ていますが、呼吸のたびにすくんだり、うねったりしますがその感覚に集中します。
  • 「胸」「お腹」ほどではありませんが、呼吸のたびに上下に動きますので、その感覚に集中します。
  • 「胴回り全体」が一つの体の部位である感覚、胴回り全体を使って空気を取り入れて、吐き出していくイメージで行いましょう。その時の胴回りの感覚に集中します。
  • 「両手」指先、手首、肘、腕・・・と順番に感覚を移動していきます。
  • 「肩」個人的には全く何も感じない部位です。なにも感じないという感覚に集中します。
  • 「首」首の裏がまくらに触れている感覚に集中します。
  • 「喉」呼吸のたびに空気が喉元を通ってくる感覚に集中します。
  • 「顔の表」顔の皮膚の感覚に集中します。かゆかったり、動いている所はないでしょうか?
  • 「後頭部」まくらに触れている感覚に集中します。
  • 「頭頂部」足先と同じく、頭の先から空気を取り込んで、吐き出していくイメージで行いましょう。
  • 「体全体」「胴回り全体」と同じく体全体が一つである感覚、体全体を使って空気を取り入れて、吐き出していくイメージで行いましょう。

 特に体全体のボディスキャンでは、体の各部位が一つになって、身体が透明になって、全身で呼吸しているという感覚をイメージしましょう。大きなリラックス効果が得られます。

 このボディスキャンですが、静座瞑想に比べても取り組みやすいフォーマルな瞑想です。静座瞑想が全然上手くできない!という方は まず2週間以上毎日ボディスキャンを行ってみて下さい。 これで瞑想習慣の基礎が出来てきます。

 こうしたフォーマルな瞑想を時間をとって継続することは、少し努力コストがかかります。ですが一度習慣になってしまえば、いつでも自分を整える心のマッサージのような機能をボディスキャンはもたらします。

 何度も強調させて頂きますが、決して初めから「うまくやる」必要は無くて、むしろ45分間の瞑想がなかなか難しいことを実感して頂くだけでも大きな価値があります。45分を通して集中をどれだけ維持できるか?よりもどれだけ真剣に取り組もうとしているかの方が大事です。

 このボディスキャンは眠気が天敵なのですが、寝てしまっては意味がありません。是非はっきり目覚めている時間帯に行って頂くか、カフェインなども上手に利用しながら、目覚めている状態で行いましょう。

 ちなみにこのボディスキャンは一番取り組みやすい瞑想と言われていますが、私自身はこのボディスキャンをとても苦手としています。というのもあまりにもリラックス効果が高い瞑想なので、もともとリラックスしている状態から始めてしまうとほぼ確実に途中で寝てしまいます。 (寝る時にボディスキャンをすると、すぐ眠り落ちることができます。)

 取り組みやすいとっても、そこには個人差もあります。もしボディスキャンは眠くなって、そんなに好きになれないという方は、静座瞑想から取り組まれても問題ありません。

 全ての瞑想に毎日取り組む必要はありません。どの瞑想の組み合わせでもよいので、一日45分間の瞑想時間を確保するのが目標です。

 例えば45分のボディスキャンなら、それを一日一回でOKです。45分の通勤時間で日常の瞑想トレーニングをやってもOKです。もちろん静座瞑想だけでもOKですし、日常の瞑想トレーニングと静座瞑想を合わせての45分でもOKです。どんな組み合わせでも問題ありません。

 そして合計45分というのも最終目標ですから、いきなりここに到達できる必要はありません。最初は一日一回だけ3分間呼吸をしっかりやる。一日十分だけ静座瞑想をやるといった目標でも大丈夫です。徐々に伸ばしていって、最終的に45分の瞑想習慣を定着させましょう。

やることを決めて習慣化

 は少しだけでも毎日やることが習慣化のコツです。ですがいきなり高い目標を掲げても毎日継続するのは難しく、それを達成できないとモチベーションも上がりません。

 ひとまず目標を決めて、その目標が難しそうな時はどうするか?までしっかり決めておくと毎日継続することが出来ます。

 例えば毎日45分のボディスキャンを目標に掲げるとします。ですが難しそうな場合は以下のようにちょっとずつ目標を下げていきます。何でも良いのでとにかく毎日瞑想に取り組むという姿勢を継続することが重要です。

 45分ボディスキャン → 20分ボディスキャン → 5分の静座瞑想 → 3分間呼吸

 このように色んな高さのハードルを用意しておいて、そのうちの一つでも二つでもやればOKという感じに決めておくと継続しやすいです。

内受容感覚

 ボディスキャンや瞑想をやっていくと、どうしてメンタルを安定させることができるのでしょうか?ボディスキャンや瞑想では自分の呼吸や身体感覚に集中していきます。

 こうした自分の身体に対する感覚を「内受容感覚」 といったりもします。この内受容感覚が強い人ほど、メンタルの安定性が高いことが分かっています。例えば皆さんは自分の体に触れないで、自分の脈拍をカウントすることが出来ますか?(自分の脈拍を正確にカウントできるかで、この内受容感覚の強さを計測できるみたいです。)

 この内受容感覚が弱いと、私達の脳は自分の体の状態を正しく理解することができません。身体感覚を意識せず、自分の感情ばかり気にしていると脳は混乱してしまうのですね。「う~ん、身体の状態が良くわからないな~、でも今感情がネガティブになっているぞ!これは体で何か良くないことが起きているからに違いない。もっとネガティブ信号を強くしなければ!」みたいに間違った反応をしてしまうのですね。

 嘔吐恐怖症の方が、少しの気持ち悪さに反応して、ネガティブ感情と気持ち悪さを強めてしまう原因の一つがここにあります。本当は大した気持ち悪さではないのに、気持ち悪くなることは誰にでもあるのに脳が混乱して過剰にネガティブ感情になってしまうのですね。

瞑想で高める内受容感覚

 ボディスキャンや瞑想の呼吸に集中するというのはこの内受容感覚を高めるトレーニングでもあります。自分の感情に反応するのを止めて、自分の身体感覚をしっかり受け止める。こうしたトレーニングによって脳も「身体の状態がしっかり把握できた。全然大したことない気持ち悪さだった。ネガティブ信号を強くしなくてもいいや」という正しい判断が出来るようになるのですね。

 瞑想を続けていけば、こうした内受容感覚が養われ、身体感覚を良く感じられるようになります。それにともなってメンタルの安定性もどんどん増していきます。瞑想に入る前に以下の腹式呼吸をやってみましょう。これでお腹や肺の広がりをより強く感じられるようになるので、その感覚のまま瞑想を行うと、いつもより身体感覚に集中できるでしょう。

  • からだの力を抜いて、リラックス。身体の中の空気を出し切るイメージで、強く息を吐き切りましょう。
  • 息を吐き切ったら、ゆっくりと鼻から息を吸い、お腹をへこませます(肛門を締めるようイメージで)。しっかりお腹がへこむ感覚を意識しましょう。
  • 息を吸い切ったら、静かにゆっくりと息を吐きます(口からでも鼻からでもよい)。同時に、絞ったお腹と肛門をゆるめてリラックスします。へこませたお腹が膨らみますので、ここもお腹の感覚を意識しましょう。
  • 1~3を繰り返して、「身体の力が抜けたな〜」と思うまでやります。(最初10回以上やる必要がありますが、慣れると1回で出来ます)しっかり呼吸を感じられるようになったら、瞑想に入りましょう。

今回のワーク

 今回のワークはこちらです。ワークに取り組むことで、このコンテンツを受講して自分がこれからするべき行動が具体化されるようになっています。具体化した行動は毎日の習慣としてください。