回避行動で強化される恐怖

 こんにちは!OPENERS第五回です。潜在意識の講義についてたくさん感想も届いています。

  • 普段から自分にかける言葉が、自分を責める言葉だったと気づかされました。
  • 「気持ち悪くなったら」「変なやつだと思われたら」ばかり考えて潜在意識を悪い方向に変えていたと思います。
  • まず一人で外食や外出をして、スモールステップで潜在意識を変えていこうと思います。

 嘔吐恐怖症というのは、何かの出来事がきっかけになることがもちろん多いのです。ですが自分の行動や考え方も常に潜在意識に少なからず影響を与え続けています。

 でも少しづつ行動を変えていけば、潜在意識は確実に良い方向に変わっていきます。この気づきを大事にして、できるところから行動を変えていって頂きたいと思います。その為の方法をOPENERSではたくさんお伝えしていきます!

 さて講義はSTEP1の「嘔吐恐怖症を知る」を終えて、STEP2の「嘔吐恐怖症の治し方を知る」に入っていきます。今回からは具体的に嘔吐恐怖症を克服していくための方法についてお伝えしていきますね。

 ここまででの講義でも、既にあなたの嘔吐恐怖症に対する印象はガラリと変わってきたのではないでしょうか?

嘔吐恐怖症の原因

 まずは嘔吐恐怖症の原因について、お伝えしていきます。嘔吐恐怖症の原因が分かれば、その原因になっている自分の行動も見えてきます。あなたは自分が嘔吐恐怖症になったきっかけや原因は覚えていますでしょうか?

 私はハッキリ覚えています。大学一年生の時です。もともと会食恐怖症持ちだった私ですが、ずいぶんと改善も進み、大学生活も落ち着きかけた時でした。

 ある日私はいつものように学生食堂で夕食をとって帰ろうとしました。しかしその日は自分には似つかわしくないような、かなりボリュームのあるメニューを選択してしまいました。完食はしましたが、大学から帰ってくる時や帰った後もずっと満腹で気持ち悪い感じが残りました。

 そしてぼんやり不安が生まれました。「ここで気持ち悪くなったら、吐いてしまったら、また会食恐怖症が悪化するのでは?8年もかけて改善してきたのに・・・」

 結局その日の気持ち悪さは収まりましたが、以降この「人と食べている時に気持ち悪くなったらどうしよう」「食べた後に気持ち悪くなったらどうしよう」という不安に悩まされることとなりました。

 そして会食を避けるために、友達とお昼はとらず、サークルや部活にも入らず、家に引きこもってゲームばかりするようになりました。その時は安心感がありましたが、やっぱり後になって「また避けてしまった・・・これでもっと悪化したらどうしよう・・・」という後悔がやってくるのでした。

恐怖の成立

 ここまで書いてきた私の行動に、嘔吐恐怖症の原因となる要素が全て含まれています。嘔吐恐怖症が発症するのは2つの原因があります。この2つの原因が両方そろうことで嘔吐恐怖症が形成されていきます。

  • 恐怖のきっかけ
  • 恐怖の維持

 私の場合、一度食べ過ぎて気持ち悪くなってそれに恐怖を感じたことが、上記の「恐怖のきっかけ」に相当します。恐怖のきっかけは大きく分けて以下の3つに分類されます。

  • トラウマ 実際に怖い体験をすること
    例:食べ過ぎて気持ち悪くなった、吐いた、吐いている所を見られた、吐いた時にとても苦しかった
  • 観察学習 怖い体験をしている人を見ること
    例:親や友達が苦しそうに吐いているのを見た、テレビや映画で吐いているシーンを見た
  • 情報伝達 怖い体験を聞いた
    例:嘔吐に関するとても怖い体験苦しい体験を聞いた、嘔吐はとても危険だという誤った情報を聞いた

 あなたもこのような体験をされたのだと思います。ですがこれは珍しい体験ではありません。このような嘔吐にまつわる体験というのは実は誰でもしているからです。 嘔吐恐怖症の方からすれば違和感があると思いますが、私の友人には「昨日焼き肉食べすぎちゃってさ~、後で吐いちゃったよ~」と笑いながら語る人もいます。

 人生の中で一度も食べすぎたり、気持ち悪くなったりしなかった人はいるでしょうか?いません。だからといってほとんどの人が嘔吐恐怖症に悩まされている訳でもありません。嘔吐恐怖症の発症には恐怖のきっかけ以外の原因があるはずです。

 それが恐怖の維持です。

恐怖の維持

 恐怖のきっかけというのは、誰にでも起きるものですし避けようがありません。ですがそれでも嘔吐恐怖症を発症しないのは恐怖が維持されないからです。

 恐怖が維持されない時は、潜在意識が「前に外食した時に気持ち悪くなったけど、気持ち悪くなるのは人としてよくあることでしょ」とか「自分はこれまでずっと美味しく食べてきたので、一度気持ち悪くなっても関係ない。全然食べたい気持ちが勝っている」という感じになっています。

 恐怖のきっかけがあっても、それを潜在意識が大したことだとは認識していないので、すぐに忘れられてしまいます。

 逆に恐怖が維持されるとは、恐怖のきっかけとなった出来事が頭の中で再現されることを言います。例えば一度会食で気持ち悪くなった人が「また気持ち悪くなったらどうしよう」とか「会食が出来なくなったらどうしよう」とか、ひいては「こんなんで人生大丈夫か」と大きな恐怖になってしまうことを言います。

 そしてひとたび恐怖が起きると、人間の以下3つの面で変化が起きます。

  • 身体の変化
    例:ドキドキ、冷や汗、ソワソワ、気持ち悪さ、吐き気、胃痛などの身体症状
  • 考え方の変化
    例:「また気持ち悪くなったらどうしよう」「吐いたらどうしよう」「会食が出来なくなったらどうしよう」「誰かが吐いているのを見たらどうしよう」
  • 行動の変化
    例:会食を避ける、お腹いっぱい食べられない、電車に乗れない、夜の街に行けない、不安薬や胃薬を常飲する

 身体の不快な症状や、不安が起きると、どんどんそれが起きる行動を避けたくなります。それが行動の変化であり、「回避行動」と呼ばれるものです。

 回避行動には「食べた後は出かけない」「お腹いっぱい食べない」「常にビニール袋を持ち歩く」「会食に⾏かない」などがあります。「他人が吐くことや吐しゃ物を見るのが怖い」タイプの嘔吐恐怖症の場合は、「吐しゃ物に遭遇したくないので夜の街に行かない」「子供の嘔吐の処理が出来ない」などがあります。

 嘔吐恐怖症の症状が出始めると、知らず知らずのうちに、この回避行動をとってしまいがちです。回避行動をとると一時的に身体の不快な症状や、不安を避けて安心感を得られるからですね。

 しかしこの回避行動が、恐怖の維持をさらに強化し、嘔吐恐怖症をさらに悪化させる原因となるのです。

回避行動で強化される恐怖

 回避行動をとると、どのように恐怖の維持が強化されていくのでしょうか?

 例えば会食を避けている人を考えてみましょう。会食の予定が入ると身体の不快な症状や不安がたくさん沸き起こってきますよね。

 イライラソワソワして、胃痛がして、食欲がなくなったりします。「気持ち悪くなったらどうしよう」「食べられなかったらどうしよう」という不安がたくさん沸き起こります。

 そして会食を避けてしまいます。この時はさっきの不安が一時的に緩和されて安心感があります。しかしこの安心感があることが困ったものなんです。

 安心感があると、脳はこのように働きます。「あ、会食を避けたら安心できた!つまり会食は危ないものなんだな。よし、次も会食を避けてもらえるように、次はもっと大きな症状や不安を出すようにしよう!」

 人間の脳は人間の生命にリスクがあるものを徹底的に排除しようとします。どんな形であれ、長く生き延びてもらうことを一番優先します。回避行動によって安心感を得てしまうと、どんどん現在の状態を強化しようとします。

  • 会食がある時は、もっと不快な症状ともっと大きな不安を生むように強化する
  • 会食を避けた後はもっと大きな安心感を生むようにする

 これは脳にとってはいたって正常な働きなのですが、ますます会食に行くのが困難になってしまいます。どこかでこの恐怖の維持と強化を食い止める必要があるのです。次回は認知行動療法によって、この負の連鎖を食い止めて、潜在意識を変えていく方法をお伝えします。

 嘔吐恐怖症の克服とは、回避行動を取ることなく毎日を楽しく過ごせる状態とも言えますね。

回避行動をとってきたあなたでも大丈夫!

 ここまでお読み頂いて、「しまった、自分は回避行動ばっかりとってきたぞ・・・」と思われた方もいるでしょう。

 しかし嘔吐恐怖症への正しい知見が無い段階では回避行動はとってしまって当たり前なのです。私もかつては外部との関係を全て断って、家でひとりでゲームをするしか出来ませんでした。

 そしてこの回避行動についての知識を得たあなたは既に変わり始めています。これから少しづつ回避行動を認知行動療法によって手放していけば良いですし、取り組みやすくなる方法もこのOPENERSではたくさんお伝えしていきますからね!

 そしてもうひとつ「他の人は恐怖のきっかけがあってもすぐ忘れちゃうんだ・・・自分のメンタルが弱くて心配性だから嘔吐恐怖症になったんだ・・・」と思われた方もいるでしょう。

 恐怖が維持されてしまった原因は実に様々です。もともと神経質で不安体質だったり、幼少期に嘔吐にまつわるショックな体験をしたり、たまたま恐怖のきっかけが起きた時がメンタルの調子が悪い時だったり・・・。こうした環境は自分のコントロールが及びません。

 そして恐怖が維持されるというのは、あなたがそうした訳ではありません。ただその時の身体と心が「これはこの先も生き延びてもらう為に、恐怖を維持した方が良いな!」と正常な判断してやっていることなのです。

 ですから自分を責める必要はどこにもありません。そして嘔吐恐怖症をきっかけに自分の身体と心のクセに気づいて、それと上手に付き合って行けるようになりましょう!そうすれば嘔吐恐怖症になる以前よりも豊かな人生が待っていますよ!

 さらにもうひとつ「自分はもう何年も回避行動し続けてしまっているぞ・・・、もう今更意識を変えることなんて不可能なのでは」と思われた方もいるでしょう。

 潜在意識を変えることは、実はいつからでも可能なのです。 人間は環境に適応していく生物です。その時の環境や考え方で自在に意識や行動を変えるのは人間の生存の為に備わっている適応力です。人間の意識が変わらなければ、私達はとっくに環境に適応できずに滅んでいるでしょうから。

 ネガティブな意識でいる時間が長くても、意識を変えるのにはその分時間がかかるという訳でもありません。私自身、物心ついた時から常にネガティブな意識で20年以上を過ごしましたが、ポジティブな意識に変わるには1年程度の時間しか要しませんでした。人間の認知や意識は、習慣が変われば3か月程度でも変化し始めると言われています。

 そして回避行動ですが、絶対に避けなければいけない、という訳でもありません。 回避行動を手放すのは最初はなかなか勇気が必要ですし、本当に体調が悪い時などは回避行動を取らざるを得ない時もあります。

 回避行動を取って一番良くないのは、「しまったまた回避行動を取ってしまった、やっぱり自分はダメだ・・・」と自己批判や後悔に及んでしまうことです。

 回避行動を取っても、その後「今回はしょうがなかったよね」と気持ちを前向きに切り替えられればそれほど潜在意識に悪影響はありません。OPENERSではこの後このような自己批判や落ち込みを減らす方法もたくさんお伝えしていきます!

 コレだけはやろう

今の自分はどんな回避行動を取っているか考えて、リストアップしてみましょう。

今回のワーク

 今回のワークはこちらです。ワークに取り組むことで、このコンテンツを受講して自分がこれからするべき行動が具体化されるようになっています。具体化した行動は毎日の習慣としてください。