かずおかず

こんにちは!OPENERSです。今回は恐怖症を克服された方の当事者体験記をお届けします。今回はカウンセラーのさやかさんに色々インタビューさせて頂きました。さやかさんは現在会食恐怖症克服支援プロカウンセラーとして活躍されています!当事者体験記として、その克服までの過程を出来るだけリアルに語って頂きました。

自己紹介

 私は会食恐怖症・嘔吐恐怖症の当事者経験があります。不安や症状がひどかった2016年頃は、食べられなかったらどうしよう・残したらどうしよう・気持ち悪くなったらどうしようという不安が強く、会食を避けていました。自身の当事者経験を活かし、今は会食恐怖症克服支援プロカウンセラーとして、メッセージ相談や通話カウンセリング・パーソナルトレーニングの他、当事者コミュニティの運営をしています。

 今回、「克服の正しいイメージを持つ」ということで、私の克服体験をお話しさせていただきます。

 まず、「克服とはどういう状態か?」というところを少しお話しておくと、私にとって克服とは「不安や症状が全くでないこと」ではなく、「不安や症状があっても日常生活を楽しく過ごせている状態」です。私自身、現在も時々会食や外出に不安を感じることがあります。

 吐き気などの症状が出ることもたまにあります。しかし、「ありのままの自分を受け入れる」「苦手なことがあってもいい」「吐き気がしても良くなるから大丈夫」と思えるようになってから、会食恐怖症や嘔吐恐怖症があっても毎日リラックスして楽しく過ごすことができています。

 もちろん、会食や嘔吐に対して不安や症状が出なくなればいいなとは思っていますが、「不安でもいい」と思ってみることが、克服への第一歩になっていると実感しています。今回は、「克服とはどんな状態か?」ということも含め、私の体験を読んでいただけたらと思います。

克服のきっかけになった一番の出来事

 会食恐怖症を克服した一番の出来事は、「食べなくてもいいよ」と言ってもらえた主人との会食です。これまでは、「全部食べなきゃ・食べられないことは変だ」と思っていました。主人とお付き合いしていた頃、会食に行った際に「食べなくてもいいし、ドリンクだけでもいいよ。後で注文してもいいし。食べられる分だけ食べて残してもいいよ、無理しないでね」と言ってもらえました。

 これがきっかけで、「食べなくても残してもいいんだ」と思えるようになり、この日はプレッシャーがなくなったことでリラックスできて結果として全部食べられました。食べなくてもいいと思えたこと・リラックスできて完食できたという成功体験があったからこそ、克服につながったと思います。

 ただ、この1回の会食で克服できたかというとそうではなく、その後は不安になったり食べられなかった日もありました。良い日と悪い日を繰り返しながら、「そういえば最近あんまり不安にならないな」という感じで気づいたら良くなっていたというイメージです。現在は、会食中に不安になったり症状が出ることはなくなり、食事中は楽しく過ごせます。

 嘔吐恐怖症から、食後に気持ち悪くなるのではないかという不安はまだあります。でも、その不安は悪いものではなく、「苦手なことにチャレンジしてるんだから不安になるよね」とプラスに受け止めるようにしています。不安がゼロになることが克服ではなく、「不安がありながらも会食が楽しめれば克服」だと思っています。

 嘔吐恐怖症の克服に関しては、克服のきっかけになった“出来事”ではないのですが、良くなるための行動として、「苦手な場面を避けずに認知行動療法に取り組み、成功体験を意識した」という部分が大きいと思います。不安が強く外出できなかった頃と比較して、今は日常生活に支障がないくらいに良くなりました。買物も旅行も行けます。

 良くなるための行動として具体的には、「これをしたら吐くかも」と思って避けてきたことに対してスモールステップで外出し、「これをしても吐かない、気持ち悪くなったけど吐かなかった」という振り返りをしていきました。買物に行ったけど吐き気がしてしまったと捉えるか、吐き気がしたけど買い物に行けたと捉えるかで、成功体験が変わってきます。吐き気がすることは想定内で、でも吐かずに良くなったよねと成功体験としてとらえるようにしました。

 家から一歩外に出るだけで吐き気がして買物に行けなかった時は、スモールステップで認知行動療法をしていきました。具体的には

 空腹時に散歩をする→パンを1口食べて散歩をする→食後1時間で散歩→食後30分で散歩→食後すぐに散歩(外食後のイメージ)→家の近くに散歩に行きそこでおにぎりを食べて帰ってくる→テイクアウトして車の中で食べて帰ってくる→外食はドリンク・軽食からチャレンジ→胃に優しいうどん

 というような流れで、空腹で散歩するところから会食ができるところまで良くなりました。スモールステップで取り組み、「吐き気がしたけど吐かなかった」「食後に動いたけど吐き気がしなかった」という成功体験を積んできたことが、克服のきっかけになったと思います。

かずおかず

さやかさんの体験から見えてくるのは、やはり最初から不安なく活動できたわけでは無く、不安をひとつひとつ受け入れていったこと、不安に囚われることなく行動を続けられたことが克服につながっていったようですね!

会食恐怖症だった過去に対する、反応や考え方はどう変わったか?

 私は、全部食べなきゃというプレッシャーから吐き気がするタイプと、会食中や食後に気持ち悪くなったらどうしようと不安になる嘔吐恐怖タイプの会食恐怖症です。会食恐怖症に悩んでいた当時は残すことに抵抗があり、「申し訳ない・怒られる・変に思われる・本当は食べたいのに美味しくないと思われるかも」という考えから全部食べられるかと不安で、残さず食べなきゃというプレッシャーで喉の詰まりや吐き気の症状がありました。

 また、「食べられない自分は情けない・変な人・嫌われる・躾がなっていない」など、食べられない自分に対してマイナスなイメージもありました。
嘔吐恐怖症についても、「吐き気がするのは変・汚い」というマイナスのイメージがありました。

 克服する過程で、「ありのままの自分でいい」「苦手なことがあってもいい」ということを大切にしてきて、徐々に「食べられなくても、吐き気がしてもいいんだ」と思えるようになりました。悩んでいた頃は「吐き気がして食べられない自分はダメだ」「不安になるなんて情けない」と考えていましたが、「誰にでも苦手なことはあるから、私は会食が苦手でもそれは個性のひとつ。苦手でもいい」「吐き気がしたら残せばいいし、不安だったらドリンクだけでいい。注文しなくてもいい。途中で席を立ってもいいし帰ってもいい」と思えるようになりました。

 「症状なく完食できること」が克服ではなく、「ドリンクだけでもいいからその場を楽しめたらOK」「誰でも吐き気がすることはあるから、体調が悪いことを伝えて無理しなくていい」と思うようにしています。

 また、会食恐怖症・嘔吐恐怖症であることを簡単に伝えるようにしています。相手との関係にもよりますが、「外食が苦手で体調が悪くなることがある。食べられないかもしれないけど心配しないでね」と伝えることで、ありのままの自分を受け入れてリラックスして楽しめるようになりました。

かずおかず

恐怖症に悩む時はついつい自分を責めてしまいますよね。ですが克服できたから自分を受け入れられるのではなく、自分を先に受け入れていくことで克服されていくのですね!

予期不安や会食中の不安に対する、反応や考え方はどう変わったか?

 「予期不安はあっていい」という捉え方を大切にしています。もちろん、不安なく行けたらより良いと思いますが、不安をマイナスの感情と捉えるのではなく、「苦手なことにチャレンジしている証拠だよね、チャレンジしている自分すごい」と褒めてあげるようにしています。

 不安をなくそうとすればするほど不安のことを考えてしまいますし、「これまでも不安だったけど結果大丈夫だったよね」と過去の成功体験を思い出して成功しているプラスのイメージを持つようにもしています。これは予祝ともいえるかなと思っていて、最悪な状態をイメージするとどんどん不安が大きくなるので、成功しているイメージを持つことで予期不安をコントロールしています。

 会食中や苦手な外出先での不安は、「不安をリセットすること」「不安だと伝えること」を大切にしています。
悩んでいた当初は、「また吐き気がして食べられなかった。次もまたそうなるのではないか」と落ち込んで不安になっていましたが、不安を受け入れてコントロールすること・プラスの評価をすることを意識できるようになりました。

 具体的には、「不安で吐き気がしてきたから外の空気を吸いに行ってくるね。心配しないでね」と伝えて席を立つようにしています。その場で不安をなくそうとするよりも、席を立つことで不安をリセットするイメージです。そうすることで吐き気も治まります。

 不安をなくそうとせず、受け入れて伝える・席を立ってリセットすることがポイントかなと思います。そう思うことで、最近では会食中に不安になることはなく、吐き気なく楽しく食事ができるようになりました。

かずおかず

不安をリセットするというのは、新しい視点ですね。たしかに不安でもふとした瞬間に不安を忘れて、それ以降不安が気にならなくなったということがありますよね!自分なりのリセット行動を持っておくと安心できますね。

再発することや将来への不安に対する、反応や考え方はどう変わったか?

 私は2016年頃より嘔吐恐怖症があり、嘔吐恐怖症から外食することが怖いタイプの会食恐怖症です。2017年はうつ病とパニック障害の治療のため薬を飲んでいました。その薬の効果があってか、不安になることがなくなり、克服したと思っていました。徐々に薬を減薬し、2019年の年末に薬を飲まなくなって2週間、船酔いがきっかけでまた嘔吐恐怖症が出始めました。その時は、また再発してしまった・また薬を飲まなければいけないのかととても落ち込み、年が明けた春までの数ヶ月は外出ができなくなりました。


 しかし、薬を飲まなくても認知行動療法で良くしていこうと考え、「気持ち悪くなったけど吐かなかった」という成功体験を意識するようにしました。気持ち悪くなった時にどんな行動をするか決めておくことで吐き気をコントロールできるようになりましたし、「私は吐き気がしやすい体質なんだ。でも吐かないから大丈夫、20分で良くなる」と思えるようになったことが大きかったと思います。

 今は「吐き気がしやすい体質」と自分を受け入れてうまく付き合いながら、「よくなったり悪くなったりしながら克服できる」というイメージが持てています。私が思う克服とは、不安がゼロになることではなく、「不安がありながらも日常生活が楽しく過ごせる」ということです。

 もちろん、不安を感じなくなればより嬉しいですが、誰にでも苦手なことはあるし気質・体質も人それぞれなので、うまく付き合っていければそれでいいと思います。そう思えるようになったことで、実際に吐き気がすることはほぼなくなりました。結果として、「吐き気がしても良くなるから、吐き気がしてもいい」と思えるようになったことで、再発や将来の不安が軽減されていると思いますし、克服できるイメージが持てています。

かずおかず

今より良い状態を目指すのはもちろん重要ですが、今の自分でもOKと思えることも同じくらい重要ですね。

日常をフローに過ごすためのヒント、秘訣など

 不安が浮かんだら「今目の前のことに集中する」ということを意識しています。以前は、四六時中「気持ち悪くなったらどうしよう」と不安で常にノンフローでしたが、「不安が浮かぶことは悪いことではない」と不安である自分を受け入れた上で、不安が浮かんだら「不安だよね、今は目の前のことに集中しよう」と自分に声をかけています。不安という感情をマイナスと捉えず、共存しながらマインドフルネスを意識することでノンフローに陥らなくなったかなと思います。

 プラスの自己対話を意識しています。不安になったら「苦手なことにチャレンジして偉いよね」と自分に言ったり、緊張する場面でも同じように「チャレンジしている自分すごい!」と褒めるようにしています。失敗した時も「失敗したけどナイスチャレンジだったよ」というように、なんでも自分にプラスの言葉かけをするようにしています。

 自分に合うフロー習慣を行っています。私に合うものは、半身浴・足湯・ストレッチ・マインドフルネス瞑想・海を見に行く・観葉植物を育てる・お昼寝・趣味の時間(手芸と音楽)です。「体を温める」「無の時間をつくる」「体を休める」「これをしている時は幸せだなと感じることを取り入れる」というのがポイントかなと思います。体を温めるのと似ていますが、日常で足首・肩・腰・おしりを冷やさないようにすることを意識しています。

 趣味の時間を大切にしています。仕事と家事の合間や、夜寝る前に趣味の時間を取るようにしています。リラックスできる時間・何かに没頭できる時間は不安を手放す時間になりますし、毎日に楽しみを持っておくことでフロー状態を維持できています。また、何かしながら不安になりがちなので(家事しながら不安がよぎる・歩いている時に不安なことが浮かぶなど)、不安に溺れないように「ながら音楽」で目の前のことに集中できるように工夫しています。

かずおかず

毎日を楽しく過ごす為の工夫がたくさんありますね。自分の感情に寄り添う習慣、自分の意識をポジティブに変える習慣を大切にされているようですね。

かずおかず

今回は会食恐怖症克服支援プロカウンセラーのさやかさんにたくさんお話を伺いました。これまでの経験から随所に克服のヒントや、正しい克服のイメージが見えてきますね。ぜひ今回のお話を参考にして下さい!