こんにちは!OPENERSです。

 前回までで日常のちょっとした隙間時間にできる「3分間呼吸法」と「日常の瞑想トレーニング」をお伝えしてきました。今回はフォーマルな瞑想として、静座瞑想を紹介します。

 これまでいくつかインフォーマルな瞑想法をお伝えしてきましたが皆様日常の中で実践されているでしょうか?徐々に自分の呼吸に集中する感覚が養われてきたでしょうか?集中出来ているときのリラックス効果を感じているでしょうか?

 瞑想を続けていくことは、心の中に小屋を作ると表現されます。3分間呼吸法の回では感情のセーフモードに入るとも表現しました。私達が暮らす世界は時に感情という大嵐がやってきます。自分ではコントロールすることのできない自然の驚異にいくら抵抗しても、決して勝ち目はありません。ならば安全な避難所で静かに嵐が過ぎ去るのを待たなければなりません。

 自分の呼吸に集中している時間は、まさに心の小屋に避難して、感情の嵐が過ぎ去るのを待っている時間なのです。どのような感情に襲われても、いつでも避難できるさらに立派な小屋を作っていきたいと思います。

 これは単なる比喩的な表現ではありません。呼吸に集中している時、今起きていることにマインドフルネスになっている時は、大きな感情がやってきてもそれに飲み込まれることはありません。そしてマインドフルネスになる力は、誰にでも元来備わっている力なのです。瞑想を通して、それに気づいていくのです。

 これは人間だけに備わった素晴らしい力なのかも知れませんね!他の動物のように感情のままだけに行動するのではなく、「自分で自分の感情を客観的に観察できる力」によって、人間は冷静に平和的に感情と共存出来ているのかもしれません。

静座瞑想

 さて静座瞑想法ですが、これは皆様がイメージする瞑想ですね。座禅・あぐら・椅子に座った状態で、ひたすら呼吸と体の感覚に集中する最もシンプルな瞑想です。お寺でお坊さんが取り組んでいるイメージのアレですね。

 3分間呼吸法や日常の瞑想トレーニングで、自分の呼吸や、体の感覚に集中する体験をされてきたかと思います。 静座瞑想法はこれを座禅・あぐら・椅子に座った状態で行います。3分間呼吸法を静かに座った状態で、それも長い時間で行うというものですね。

 こうしてさらりと書いていますが、静座瞑想はとても難しい瞑想です。 ですが静座瞑想にしっかり取り組めるようになると。いよいよ本格的に瞑想の効果を実感し始めます。(剣道の素振りのように、何事も基本が一番難しいと言われますが、静座瞑想も同じです。)

 禅宗のお寺ですと、この基本となる静座瞑想を1日4時間も行ったりします。以前禅宗の修行僧のドキュメンタリーを観た事があるのですが、修行期に入ると1日で10時間以上も静座瞑想を行うことも・・・。

 でも嘔吐恐怖症を克服する為には、そして私達の生活に十分な恩恵を受ける為には一日に何時間も座り続ける必要はありません。お伝えしたように本プログラムの最終目標は「1日に45分間の瞑想を、様々な瞑想を組み合わせて行うこと」です。45分でも嘔吐恐怖症の克服と、そして私達の人生を心理的に豊かにするために十分効果があります。

できなくても気にしない

 静座瞑想は難しい瞑想なので、最初はできなくても全然気にする必要はありません。10分間だけやると決めたなら、全然集中できなくてもとにかく10分間やり通しましょう。

 全然できなくても、その中で「感情や思考は止めようとしても勝手に沸き上がってくる」「自分はどういう感情に引っ張られやすいのか」といった重要な事実に気づいていきます。瞑想の基本的な態度でもお伝えしたように、とにかく毎日決まった時間だけ取り組むことさえ出来ていれば、あとは自然と深い集中が身に着いてきます。うまくやろうとする必要は全くありません。

 それでは具体的なやり方を説明していきますね!

姿勢が重要

 まず座ります。できれば座禅やあぐらが良いのですが、長い時間維持できそうにない!という方は椅子に座った状態でも構いません。(でも座禅やあぐらの方が集中力は維持しやすいです・・・その理由は後からわかります)座禅やあぐらの場合、腰が痛ければクッションを敷いても良いです。

 クッションは柔らかいものだと姿勢を維持しにくいので、できれば硬いものを選びましょう。座禅用のクッションも市販されていて、こちらは結構硬いつくりになっています。ある程度慣れてきたら。そちらを試しても良いでしょう。

 姿勢さえ長時間保てるなら座り方は何でも良いでしょう。静座瞑想では何といっても姿勢が大事です。腰から首にかけて真っ直ぐと、かつ力は入れすぎようにして、自然な空気の通り道を作ってあげます。長い時間呼吸に集中しないといけませんから、姿勢には気をつけましょう。一番安定して、呼吸がしやすい姿勢になる座り方を自分で見つけましょう。

 一番のオススメは、まず静座をしてその状態でおしりにクッションを敷く姿勢です。姿勢を維持しやすく、足腰も痛くなりにくいです。

 最初は真っ直ぐな姿勢を長時間維持するのは大変かもしれません。ですが一番集中力を維持できるのは真っ直ぐな姿勢で動かない状態です。出来るだけ意識的に真っ直ぐな姿勢を保ちましょう。

3分間呼吸法と同じ

 目を閉じても開けても、どちらでも大丈夫です。目を開ける場合は目線を何か1点に集中させてそらさないようにしてください。

 (この目を開けるべきか、閉じるべきか、というのも宗派で流儀が違ったりするようですが、自分が集中を維持しやすい方を選べば良いです。私は目を閉じるとすぐにウトウトしてしまうので、常に目を開けて行っています。)

 自然な呼吸が出来る姿勢になったら、いつもの3分間呼吸法と同じく呼吸に集中します。空気が鼻や口から入ってきて、肺を満たし、お腹が膨らみます。そしてまた肺とお腹が縮んで空気が出ていきます。その感覚をじっと味わいます。思考がさまよいだしたら、また呼吸に集中を戻してください。3分間呼吸法と違うのは静かに座ることと、時間の長さだけです。まずはこれを10分間維持してください。

呼吸以外に意識を広げる

 ある程度安定して呼吸に意識を向け続けられるようになったら、今度は別の感覚に意識を向けてみましょう。

 視覚に意識を向けます。今見えているものをじっと見つめます。次に聴覚に意識を向けます。今聞こえている音をじっくり聞きます。さらに触覚に意識を向けます。呼吸によって身体が少し動きますので、触覚もその度に微妙に変化します。服と皮膚がこすれる感覚、座って自分の足が圧迫される感覚。こういった視覚・聴覚・触覚も常に変化しています。その変化を感じ取ります。

 最終的には呼吸、そして視覚・聴覚・触覚全てに意識が集中している状態を目指します。今まさに自分の体に起きていることを一つも逃さず観察している状態です。もちろん全ての感覚に同時に意識を払うのは不可能ですから、常にこれらの感覚のなにか一つに集中している状態を目指していきます。

一日10分の静座瞑想

 こうして書くと3分間呼吸法の延長で、簡単にできそうな気がしますが、静座瞑想は難しく姿勢を維持するのも大変です。日常の瞑想トレーニングでは自分の体の感覚が様々変わっていきますので、飽きずに集中力を維持しやすいです。一方静座瞑想ではあまり感覚の変化が無い中で集中し続ける必要があります。ここでも3分間呼吸法と同じく呼吸の回数を数えるというのが、集中を維持する助けになります。

 呼吸だけに集中するのはなかなか大変です。静座をしていると、ちょっと足が痛くなったり違和感を感じたりします。静座瞑想ではこの違和感が集中を維持するのに役立ちます。そのちょっとした痛さ、違和感、体重が足に乗っている感覚に注意を向けても良いので、呼吸の合間は自分の体の感覚にも意識を向けてみましょう。

 これが座禅やあぐらの方が集中しやすいと先に述べた理由です。実は椅子に座っていると楽なのですが、体の感覚があまり変化しないので、集中を維持するのが難しくなるのです。

 このOPENERSが目指す瞑想習慣は一日に45分です。今後講義していく他のフォーマルな瞑想も含めて一日45分の瞑想を行うのが最終目標になります。もちろん静座瞑想だけで45分行えるようになれば素晴らしいですが、これは難易度が高いですよね?そこで他のフォーマルな瞑想を組み合わせて45分を実現していきます。

 これまで3分間呼吸法と日常の瞑想トレーニングを紹介しました。それではこの静座瞑想も実践していきましょう。まずは一日10分間の静座瞑想を毎日行ってください。(もちろん最初から15分・20分とできるなら、時間は長いほうが良いです。)そしてちょっとした隙間時間に3分間呼吸法と日常の瞑想トレーニングも行っていきましょう。

 ここまで自分にあった瞑想法を見つけて頂くために、やや矢継ぎ早に様々な瞑想をお伝えしてます。瞑想法を一通りご紹介できた後に、どの瞑想を、どの時期に、どれだけやるかは改めてまとめさせて頂きますのでご安心下さい。今の段階では自分ができそうなものをかいつまんで取り組んで頂くだけで大丈夫です。(もちろん全部できるなら全部やってみましょう!)

瞑想の副作用?唯一の注意点

 瞑想には基本的に副作用はありません。どれだけ取り組んでもポジティブな効果はあっても、ネガティブな効果はありません。ただ一点だけ注意すべき事があります。

 瞑想中には過去の辛かった出来事やトラウマになっている記憶が沸き上がって来る場合があります。これは私自身も何回か経験しました。20分くらい続けていると、嘔吐恐怖症の辛かった時の記憶や、将来が急に不安になったりと、いろんな感情が一気に湧いてきた事があります。

 これは瞑想中は潜在意識が現れやすいので、よく起きる現象とされています。この現象自体は誰しも起きるので問題ではありません。起きてもいつも通り「今辛かった時の記憶がどんどん出てきているな~」と呼吸とともに観察を続けて下さい。何度か経験すると、すぐに呼吸に集中を戻せるようになります。

 こうしたネガティブ感情が沸き上がってきても、それ自体には問題が無いことは覚えておきましょう。むしろそのようなネガティブ感情が湧いてきても、色々解釈を加えることなく、ただ観察してまたゆっくりと呼吸に集中を戻すこと。これが最高の瞑想の練習になるでしょう。

眠かったら一度寝る

 この静座瞑想の大敵は何といっても眠気です。

 何しろ何もしないで10分以上座り続ける訳ですから、必ず眠気がどこかのタイミングでやってきます。これを防ぐには適切にカフェインを入れるか、眠くなる時間帯を避けて行う必要があります。

 それでもやはりウトウトしてしまって瞑想にならない時があります。眠気と闘っている時は全く瞑想の効果は得られません。

 そんな時は一度瞑想を止めて、そのまま5分でも10分でも寝てしまうのも良いです。少ない時間でも一度寝るとスッキリします。それからまた瞑想を再開していきましょう。

瞑想のヒント~思考も呼吸

 静座瞑想を始めると実感しますが、最初のうちは余計の思考が生まれてきて、ほとんど集中できない場合が多いと思います。ここでも再度お伝えしますが、瞑想によって余計な思考が生まれなくなる訳ではありません。その思考と上手に付き合っていくための訓練なのです。

 私が瞑想を続ける上で役立っているヒントを紹介します。それは「思考も呼吸である」というイメージです。

 呼吸は意識せずとも勝手に起こります。自分でコントロールしなくても起こります。そして死ぬまで止まることはありません。そして呼吸をしているのはただ生きているという物理的な意味以外は何もありません。

 余計な思考もこの視点から見れば、まさに呼吸と同じです。余計な思考は意識せずとも勝手に起こります。自分でコントロールしなくても起こります。そして死ぬまで止まることはありません。そして思考をしているのはただ生きているという物理的な意味以外は何もありません。生きるために、決して止むことの無い「脳の呼吸」とでも解釈できると思います。皆様がイメージする深い瞑想は以下のようなものかと思いますが、

 呼吸に集中 → 呼吸に集中 → 呼吸に集中 → 呼吸に集中 → (ずっと無の状態を維持できる!)

 実際はこのような状態を維持することはできません。瞑想は以下のようなものが近いです。こちらを少し意識して瞑想に臨むと、余計な思考に引っ張られにくくなると思います。

 呼吸に集中 → 余計な思考(脳の呼吸) → あ、今余計な思考が浮かんだな。脳も呼吸しているんだな(脳の呼吸に集中) → 呼吸に集中 → 脳の呼吸に集中

 余計な思考が浮かんだらそれを「脳の呼吸」として捉え、息の呼吸と同じく思考を観察して、それがどのように変化するかを見ていきましょう。 今沸き上がった思考はどのように変化していきますか?別の思考が浮かびましたか?それとも何も浮かびませんか?そのうちに次の息の呼吸が起こり、息の呼吸に集中が戻る・・・といった感覚です。このように思考も「脳の呼吸」として捉え、呼吸に集中するリズムに組み入れてあげると、集中を維持しやすくなると思います。

 このように「思考とは自分の意思とは関係なく勝手に生まれて、勝手に消えていく呼吸みたいなもの」という感覚が養われていくと、一気にこれまでの感情への向き合い方が変わってきます。

 予期不安・吐くことへのパニック発作・気分の落ち込みといった症状はこれまでお伝えしてきた通り、ネガティブな感情に抵抗することによって生まれます。しかし上記の感覚をつかむと抵抗を一切しないようになります。今起きている思考や感情は自分がどうにかすることでは無いと心から納得できるようになるからです。

理想は静座瞑想だけで45分間

 静座瞑想は集中力を維持するのが難しい瞑想です。ですがとにかく実践すること・続けていくことでどんどん集中力を維持できる時間も長くなっていきます。静座瞑想を続けられる時間がひとつ瞑想習慣のバロメーターであり、続けていく為のモチベーションにもなります。

 嘔吐恐怖症を克服する為、そして私達の生活に十分な恩恵を受ける為にひとまず目標としたいのが、静座瞑想を45分間続けることです。この段階までいくと、かなり自分の感情を客観的に観察する力が身に着きます。そして感情に受ける影響も大幅に減っています。

 そしてなぜ通しの45分間の瞑想をして頂きたいかと言うと、瞑想は長くやるほどにどんどん集中力が増して、より自分の感情を客観的に観察できるようになるからです。

 おそらく最初の10分~20分の集中力を維持するのが大変かと思います。この間は上手くできない!という感情にのまれることも多いと思います。しかしこの峠を越えて30分を超える辺りから、かなり集中力が上がります。自分の感情を完全に客観視して、それを受け流している感覚がどんどん高まってきます。 この感覚を体験するほどに瞑想の効果も上がりますし、もっと瞑想に取り組みたいというモチベーションも上がってきます。

 10分→20分→30分→45分という感じで徐々に瞑想を維持できる時間を伸ばしていきましょう!

今回のワーク

 今回のワークはこちらです。ワークに取り組むことで、このコンテンツを受講して自分がこれからするべき行動が具体化されるようになっています。具体化した行動は毎日の習慣としてください。