OPENERS21回目です。ここからはさらに嘔吐恐怖症の克服に役立つ実践的な技術を紹介していきます。こうした技術をプログラムの終盤に持ってきているのは、これまでと同じように、これらの技術も「マインドフルネス」と「セルフコンパッション」の延長線上にあるからなのです。

 今回は不安を減らす、特に会食に行くなどの認知行動療法に取り組む前に起きる「予期不安」に対して効果的な技術を紹介していきますね。

脱フュージョン

 「脱フュージョン」とはネガティブ感情に捉われ続けないようにするための技術です。こちらはカウンセリングで配布している無料書籍の中でも紹介するなど、昔から発信し続けてきた内容でもあります。既に知っている方もいるかもしれませんね。ですが、これまでマインドフルネスを学んできた皆様にとっては、この脱フュージョンがさらに一段上の効果を発揮できると思います。

 もう一度脱フュージョンについておさらいしておきます。脱フュージョンではネガティブ感情を否定しません。ネガティブ思考の存在を許すが、それを真剣に受け取らないようにするのです。ネガティブ感情を止めることはできませんが、それに対していちいち真剣に取り合わずに、受け流していくのです。

 脱フュージョンを実践するのは「ネガティブ感情が頭に浮かんだ時」です。ネガティブ感情は一日に何度も起こりますので、脱フュージョンを練習する機会はたくさんあり、やればやるほど上達するものです。3分間呼吸法と同じようなものです。

自分を客観視する

 最初の脱フュージョン方法は、ネガティブ感情が浮かんだ時に客観的視点に立ってみる方法です。例えば「自分はなんてダメな奴なんだ!」と浮かんで来たら即座に「自分は「自分はなんてダメな奴なんだ!」と考えている」と頭の中で言い換えてみましょう。 一段客観的な視点から言い換えてみるのですね。こうすることでネガティブ感情が自分にとって絶対信じるべき真実から、ただ頭に浮かんだストーリーに変わります。

 ネガティブ感情は事実ではなくただのストーリー、頭の中だけの想像です。つまり「正しいかどうかはわからないが、自分が正しいと思っていること」に過ぎません。ネガティブ感情の大半は実際には起こりませんし、また起こったとしても自分の想像以上に悪い事であるケースはほぼありません。

 脱フュージョンをすることでネガティブ感情を事実ではなく、ただのストーリーであると再認識するのです。そうすることでネガティブ感情が絶対に正しいと信じ続けたり、ネガティブ感情を必要以上に大きくすることを防げます。

 脱フュージョンを行えば即座にネガティブ感情が消えて、良い気分になるというわけでもありません。脱フュージョンはネガティブ感情を止める技術ではなく、ネガティブ感情の存在を許すが、それを客観視して真剣に受け取らないようにするための技術なのです。

 もし会食前に「もし全然たべられなかったら・・・」というネガティブ感情が浮かぶことがあるでしょう。そんな時は「私は今食べられない事を心配している」とか「食べられないという考えを持っている」という考えに変えてみましょう。食べられないことが絶対に決まった事実ではなく、ただ自分がそういうストーリーを思い描いているのだという認識をしましょう。

脱フュージョンはマインドフルネス

 脱フュージョンはネガティブ感情を持っている自分を客観視する技術でした。ここまでOPENERSで学びを深めてきた皆様ならこういう疑問が浮かぶかもしれません。

「それって結局マインドフルネスじゃないの?」

 その通りです!結局脱フュージョンもマインドフルネスになるための方法の一つなのですね。ですが自分がネガティブ感情に陥っている事に気づいていない状態ではこの脱フュージョンも出来ません。瞑想によって普段からネガティブ感情に陥っている事に気づきやすくしておけば、脱フュージョンを行うべきタイミングやその効果もより分かってくるようになるのですね。

 こうして瞑想によって脱フュージョンの効果も一層高まる事になります。以前お伝えした全てのネガティブ感情に対する処方箋の中に脱フュージョンを取り入れると以下のようになるでしょう。よりネガティブ感情に気づき、脱しやすくする技術です。

ネガティブ感情「会食が不安だ」「もし全然たべられなかったら・・・」

ネガティブ感情になっていることに気づく

ネガティブ感情に対して脱フュージョン「私は今、会食を不安に思っている」「私は今、食べられない事を心配している」

セルフコンパッションを与えるとなお良し!「苦手に挑戦するのだから、不安で当たり前」「人間だから不安が止まらなくて普通」

 瞑想によるマインドフルネスや、この脱フュージョンですが継続していくと、「マインドフルネスになろう!」とか「脱フュージョンをやってみよう!」とか能動的に意識しなくても、勝手に心がネガティブ感情を受け流すようになっていきます。

 そういったネガティブ感情は自分でコントロールできないもの、深堀しても何の解決にも繋がらない事が深いレベルで意識に浸透するようになるので、心がいちいち反応しなくなってくるのですね!

キャラクターボイスに乗せる

 別の脱フュージョンの方法についても紹介しておきます。この方法ではあるキャラクターを使用します。皆さん、自分が一番好きな映画や漫画やアニメのキャラクターを思い浮かべてください。

・・・思い浮かびましたか。ではそのキャラクターの声を思い出してください。できるだけ頭の中ではっきり再現できるくらいに思い出してください。

 さっき思い浮かべたキャラクターの声でネガティブ感情を頭の中で再生してみましょう。たとえば「明日の会食が不安でたまらない!」というような場合には、好きなキャラクターの声で「あぁ~明日の会食不安だな~、どうせ失敗するな~」と頭の中で再生してみるのです。

 やってみると分かるのですが、自分の声でネガティブ感情を考える代わりに、別のキャラの声に置き換えて考えてみることで、そのネガティブ感情の真剣度が全然違ってきます。別のキャラの声だと真剣に受け取れないのです。これにより自然と脱フュージョンすることができるのです。

 これは一時期、私の一番のお気に入り方法でした。瞑想と出会う前は、これで色んな不安を受け流していました!

今回のワーク

 ワークに取り組むことで、このコンテンツを受講して自分がこれからどう行動していけばよいのか?が具体化されるようになっています。具体化した行動は、是非毎日の習慣としてください!