OPENERS22回目です。これから皆様は克服に向けて、認知行動療法に取り組まれていくかと思います。

 今回お伝えするのは、とっさに嘔吐恐怖症の症状が出てしまった時に緩和する方法です。

 以前に自分専用の認知行動療法プログラムを作成しました。そこではあらかじめ不安なことが起きたらどうするか?も一緒に考えました。そんな時に是非お試しいただきたい技術です。こういう技術を知っておくと、より一層認知行動療法のプログラムも立てやすくなると思います。

 そして、これまでと同じように、これらの技術も「マインドフルネス」の延長線上にあります。

症状の出るしくみ

 不安が大きくなりすぎると、恐怖に変わり、闘争・逃走反応が出て、嘔吐恐怖症の症状が起きます。ではどうして不安が大きくなり続けるのでしょうか︖それは「不安に注意が向き続けるから」です。

 不安に注意が向き続けている、というのはどんどん不安の連鎖が起きているということです。最初は⼩さな不安でもその不安を確かなものと信じこんでしまえば、さらなる不安を生んでしまうのが人間です。

 例えば次の項目のような感じで、不安が不安を連鎖的に生みます。皆さんも経験あるかと思いますが、 会食での「今日食べられるかな」という⼩さな不安がいつの間にか「人生大丈夫かな」 という大きな不安に変わっています。

「久しぶりの会食だ。緊張するな」↓
「前回うまくいったから、今回もうまくいくと良いな」↓
「あれ︖でもなんかちょっと気持ち悪い感じがする」↓
「せっかく前回良かったのに、またダメになるの︖」↓
「あ〜やっぱり気持ち悪い。なんかちょっと吐き気もする」↓
「食べ始めて一⼝も食べられなかったらどうしよう」↓
「みんな自分のこと嫌わないかな」↓
「いつまでも治らないのかな」↓
「治らなかったら就職とかどうしようかな」↓
「就ける仕事が限られるのかな」↓
「将来不安だな」↓
「人生大丈夫かな」

 不安が連鎖し続けて、不安を確かなものと信じ込むと恐怖に変わり症状が出ます。症状は⾊々ありますが、その全ての原因はコレ一つです。つまり「不安に向いている注意を他の物に向けて、連鎖を止めること」が不安を大きくしないということなのです。

 では他の物に注意を向けるとはどういう事でしょうか?これがつまりマインドフルネスになる、という事なのですね!

マインドフルネスで断ち切る不安の連鎖

 不安から注意を外してマインドフルネスになれば不安の連鎖は止まり、やがて不安は⼩さくなっていきます。

 つまり自分でいつでもマインドフルネスになれる方法を持っていれば、それは嘔吐恐怖症の症状が出るのを防ぐ方法になるのです。

3分間呼吸法

 これまで日常の隙間時間で取り組まれる事をオススメしてきた3分間呼吸法ですが、これはとっさの症状を防ぐ効果もあります。もし電車や外出中に嘔吐恐怖症の症状が出そうな時は、この3分間呼吸法をやってみましょう。

 どんなときも呼吸はしています。その自然な息遣いを全⼒で感じ取ります。息が⼝や⿐を通り抜ける感覚、肺が少し膨らんだりへこんだりする感覚、また呼吸の音やペースなど意識を集中して全て感じ取ろうとしてください。症状が出そうな時は、パニックに陥りやすくなっていますので、呼吸の数を数える、というのもさらに集中が増して効果的です。息を大きくしすぎない で、できるだけ自然な息遣いでやるのがコツです。

 しばらく⾏っているうちに 注意が不安から離れていたこと気づくでしょう。一度注意が他の物に向けば気持ちが落ち着き、症状が治まっていきます。そしてこの「どれくらいの時間で症状を治める事ができたか?」と言うのも意識してみましょう。「症状が出てはいけない!」のではなく、練習を積んで、「症状を早く治められるようになる」という意識の方が、より認知行動療法にも取り組みやすくなります。

 普段から3分間呼吸法に取り組まれていれば、こうしたとっさの場面でも自然に3分間呼吸法を行う事ができるでしょう。

実況法

 自分の感じるものをひたすら実況するという、これもマインドフルネスになる方法です。周りの環境に注目し、⾒えている物、聞こえている音、感じる匂いや温度に意識を向けてそれをひたすらに心の中で実況するのです。

 例えば食べている途中に気持ちが悪くなってしまい、意識がそちらに⾏きそうになった場合に「さあ気持ちが悪くなったので実況を開始します。店内には心地よい BGMが流れています。これ は何の曲でしょうか︖入り⼝には観葉植物が置いてあります。これはなんの植物でしょうか︖お店の温度はどんな感じでしょうか︖やや寒い感じがします ね・・・」

 という感じでとにかく思考が途切れないように自分が感じるもの全て実況してみるのです。これをやっている間は意識が強制的に外に向くので気持ちが落ち着き、気持ち悪さが緩和されます。少し余裕がある場合は「人との会話に注意を向けて、楽しんでみる」のもいいでしょう。

 こちらの方法も、瞑想によるマインドフルネスが深まってくると、特に実況しようと意識しなくても、自然と意識が不安から周りの環境に向くようになります。

自己流マインドフルネス

 マインドフルネスになれるなら、どんなやり方でも嘔吐恐怖症の症状を緩和する方法になります。 自己流の方法を見つけてみても良いでしょう。

 例えば「爪もみ」をやってみて、その痛気持ちよさに集中する。音楽を聴いてその音に集中する。景色を眺めて目に入る車の数を数える。アロマを嗅いでその香りに集中する・・・。やり方はいくらでもあります。

 これまで培ってきたマインドフルネスの感覚に入れる、お気に入りの方法を見つけてみましょう。

 

今回のワーク

ワークに取り組むことで、このコンテンツを受講して自分がこれからどう行動していけばよいのか?が具体化されるようになっています。具体化した行動は、是非毎日の習慣としてください!