自己批判をやめるべき理由

 OPENERS12回目です。1か月の講義を経て徐々に嘔吐恐怖症の知識、自分の状況、そして瞑想の取り組み方などが分かってきたと思います。今回は自己批判について詳しくお話させて頂きます。告知ページでもお伝えしたように嘔吐恐怖症と自己批判は深いつながりがあります。

 皆様もそろそろ簡単な瞑想に取り組まれ、いかに自分が自己批判に無意識だったかを実感され始めているのではないでしょうか?これから瞑想を続けていくと、よりその感覚がつかめてきますので、是非継続してくださいね!

 さて、これまでも自己批判は克服にはつながらない事をお話してきましたが、今回はより詳細なその理由についてお話したいと思います。

最新の研究では自己批判は無意味

 以前に日本人は教育の影響を受けて、自己批判をしやすい気質があると説明しました。ですがこれは日本人に限ったことではありません。

 欧米人も他人に対しては陽気にふるまっていても、実は内面でも自己批判的な気質があるようです。自分の心を強く保ち、たくましく生きていくことが美徳とされる風潮があるからでしょうか。

 もちろんこうした自己批判も全く役に立たない訳ではありません。あくまで「反省」の範疇なら大いに自己批判して、次同じ失敗を繰り返さないようにすべきでしょう。しかし少しうまくいかないことがあると「自分はとんでもなくダメなやつだ」と決めつけてしまい、結果的に自分でエネルギーを失っているのです。

 最新の心理研究によれば、実は自己批判的な人よりも自分を励ませる人の方が様々な面でパフォーマンスが高い事が分かっています。同じ自分を激励しているつもりでも、自己批判は恐怖や劣等感と言ったネガティブ感情がベースになっています。「こんな自分はダメだ」「今すぐ変えないとダメだ」と自分を脅しても、プレッシャーをかけて不安を大きくしているだけですから、うまくいくはずがないのです。

心の強さとは自分をはげませること

 逆に自分を励ますことは自己愛のポジティブ感情がベースになっています。今の自分を認めて、自分で希望を作り出しているので、次も頑張ってみようという気になります。また普段から自分を励ますことが出来ていると、落ち込んだ時も「自分で自分を励ませるから大丈夫!」という失敗に対する恐れが少なくなるので、より行動的になります。

 自分を励ますことに抵抗感のある人もいます。こういう人は「自分を甘やかして、怠惰になるのでは?」という思い込みがあるようです。自分を甘やかすというのは、一切の行動までもやめてしまう事です。自己受容の考え方は「自分を励まして、行動し続けられるようにする」ですから自分にどんな甘い言葉をかけても、行動が止まらなければ甘やかしている事にはなりません。

 そもそもどんな行動でも、ポジティブ感情がベースなら何でもするべきなのです。「ちょっと疲れたね。ここらで一休みしようか」と思えるなら思いっきり休むべきですし、「○○がしたい」と思うならそれに邁進すべきでしょう。

 逆にネガティブ感情がベースだと何でもうまくいきません。「も~いやだ。全部投げ出しちゃえ」という動機なら心の底から休むことはできませんし、「今すぐ○○しろ!じゃないとダメ人間だぞ」という動機ならプレッシャーでうまく行動も出来ないでしょう。つまり休むにしても、行動するにしても、自分にかける言葉は常に優しくあるべきなのです。

そもそもあなたがダメなのか?

 もう一つ自己批判をやめるべき理由をお伝えします。それは「その自己批判は完全に的外れだから」です。

 どうして嘔吐恐怖症になってしまうのでしょうか?よく聞くケースは「無理な給食の完食指導」が挙げられます。幼少期の抵抗ができない時期に、無理やり食べさせられた経験は「食事は苦痛なもの」という記憶を植え付けます。これにより人との食事を楽しめなくなってしまうのです。そしてこれは自分の力でどうにかできる問題ではないですよね。

 嘔吐恐怖症になる原因は様々です。小さい時は小食でも楽しく食べられていたのに、大人になってから食べないことを周りに否定されて(否定されたと感じて)発症してしまったり、親に無理やり食べさせられて発症してしまったり・・・。こういった本人にはどうすることもできない外部要因が影響しているのです

 ですが原因は外部的な要因だけではありません。本人の性格が影響することもあります。周りに気配りができる優しい性格ゆえに、「食べないといけない」と自分を追い詰めてしまう場合もあります。さらには生まれながらの身体的特徴が影響することもあります。私のように少しの緊張がすぐ吐き気を引き起こしたり、喉のこわばりを起こす体質の人もいます。

 このように嘔吐恐怖症になる原因は「幼いころの出来事」「家庭環境」「遺伝的要因」「人生経験」等、実に様々あります。こうした要因が複合的に絡み合って発症するのです。自分では「あれが原因だ!」と分かっているつもりでも、実は発症の背景にはいろんな要因が隠されているのです。つまりは「嘔吐恐怖症になった原因ははっきりとはわからない」だけど「自分がコントロールできない要素も絶対関係している」という事なんです。だとしたら、あなたが自分を嘔吐恐怖症だからと言って、非難し続ける必要はないですよね。

どうして自分を責めてしまうのか?

 それではどうして自分を責めてしまうのでしょうか?それは「自分の人生・行動・感情は全てコントロールできるものであり、自分以外の人間はうまくやれている」という幻想があるからでしょう。表面的な人間関係やテレビの世界だけでは、本来人が皆等しく抱えている苦しみを理解する機会はあまりないでしょう。

 すると他の人はみんな思い通りの人生を歩んでいるように見えてしまうのです。ですが・・・もちろんそんなことはありません。輝いて見えるあの人も、この人も、その人も実はうまくいかない人生に悩んでいるものです。実際私も毎日嘔吐恐怖症と戦っているわけですが、「全く病みそうにない性格してるよね」なんて言われたりします。表面だけの関係では、その人の苦しみは絶対見えてこないのです。

 ですから自分の人生・行動・感情がコントロールできなくても、それは当然のことです。嘔吐恐怖症になる要因だって様々あるのですから、簡単に治らなくてもそれも当然のことです。

 ここまで見てくると、全部の責任は自分にあるわけでは無いですよね。責任が全部自分に押し付けた方が安心感があるかもしれませんが、それは完全に的外れというわけです。

 自己批判をやめるべき理由がお分かり頂けたと思います。自己批判はついついその場だけの安心感を得るためにやってしまいがちですが、結果的には自分のエネルギーを失う結果につながります。自己批判は無駄なのではありません。無駄よりも、もっとたちの悪いものなのです。

今回のワーク

 ワークに取り組むことで、このコンテンツを受講して自分がこれからどう行動していけばよいのか?が具体化されるようになっています。具体化した行動は、是非毎日の習慣としてください!