克服の3つの兆候

それではここから現実に即した正しい克服のイメージをお伝えしていきますね。克服する時には私達に以下の3つの兆候が表れることをお伝えしました。
- 日常がフローになる
- 不安への捉え方が変わる・なんとなく大丈夫と思えてくる
- 過去や未来についての捉え方が変わる
前回は克服の兆候として、不安への捉え方が変わる・なんとなく大丈夫と思えてくることをお伝えしました。嘔吐恐怖症というのは症状が出なくなったから・・・認知行動療法で結果が出ているから・・・という理屈の上で考えた好材料だけで治っていくものではありません。
根拠も自信もない。だけれども心のどこかでなんとなく大丈夫という感覚がある。このような感覚が徐々に芽生え、そして大きく育っていくことで嘔吐恐怖症は克服されていきます。
そして今回は3つ目の克服の兆候についてお伝えします。
それは過去や未来についての捉え方が変わる ということです。
私達は常に未来か過去を考えている

私達は常に未来か、過去の話を考えています。
これまで瞑想によるマインドフルネスを実践されてきたあなたなら、この重大な事実にお気づきかもしれません。目の前のことを楽しむ、じっくり味わう時間はほとんどなく、未来に向けての楽しいこと、希望、そして不安を抱き続けています。
一方過ぎ去った過去は関係ないかと言えばそうでもありません。私達は過去についても非常に多くの時間をかけて考えてしまいます。あの時あんな出来事がなければ、あの時ああしておけば、ほとんどが過去のトラウマや後悔にまつわるものです。
実際過去や未来のことについて考えて、生まれてくるのは不安しかありません。
これまで何度もお伝えしてきたように人間はとてもネガティブです。過去から学べるだけ学び、未来への脅威を少しでも排除するために、常に過去や未来のことを考えさそうとします。
未来は絶対に分からない
あなたはこれまでどれだけ未来についての予見を的中させてきたでしょうか?
自分が思った以上に悪いことも起きなければ、思った以上に良いことも起きないのが普通だと思います。当たり前ですが未来と言うのは絶対に予測できません。明日死んでしまう可能性だって0ではありません。予見がこれまで当たっていると思っている方も、実はそんな気がしているだけで、だれにも未来を予見することは出来ません。
そしてこれまで瞑想に取り組まれた時、どれほどの未来に対する不安が沸き起こってきたでしょうか?嘔吐恐怖症の方なら、進学・就職・結婚といった人生設計を不安に思う方もいるでしょう。その膨大な不安の中で何が正しくて、何が正しくないのか、私達はどうすれば正解なのか、結局知ることは出来ません。
人生に起きることは予見は不可能ですし、しかもその起きたことに対してどのような意味づけをするか、どう捉えるかも私達のその時の状態によるわけです。分からないものをどんな状態か分からない私達が経験するのです。
私達が出来ることは結局ただ一つで、「今自分がしたいこと、した方が良いと思ったことをやり続ける」これだけです。その行動の結果が正解か不正解かも知ることはできません。ただひたすらこれを繰り返していくのが人生なのです。
もちろん理屈の上ではそれが分かっていても、ついつい思い悩んでしまうものです。そこで瞑想とセルフコンパッションを継続して頂きたいと思います。続けて頂くと、理屈だけでなく潜在意識の深い部分でこのことが納得できるようになります。
瞑想を続けると、本当にたくさんの未来への不安と向き合わさせることになります。瞑想をするたびに何度も何度も不安な感情を受け流していくうちに、「未来への不安は止まらまいもの、勝手に起きるもの」「不安が正しいか正しくないかは絶対わからない」「不安に捉われず今やるべきことをやっていれば良い」 このような態度がだんだん養われてきます。
なんかあまり最近将来について悩まなくなってきたな?目の前のことの集中する時間が増えてきたな?そのような感覚があると、潜在意識が未来への不安ではなく、今この瞬間に向き始めている証拠です。
このような態度が身に着くと、感情によって行動を阻害されることがどんどん少なくなります。とにかく行動的になります。すると克服も一気に加速していくことになります。
過去も絶対に分からない
同じことが過去についても言えます。
特に過去については、あの時あんな出来事がなければ、あの時ああしておけばという思い込みが強くなりがちです。過去が違っていたら、今の人生ももっと変わっていたはずだという考えに囚われてしまうのです。
未来についての予見が絶対に正しくできないのと同じく、過去に対する反芻や解釈もこれまた絶対に正しくできないものです。自分の身に降りかかる出来事というのは自分がコントロールしている訳ではありません。ほとんどは自分ではコントロール多くの要因が働いて、起きるべくして起きているのです。
わたしもかつては嘔吐恐怖症でさえなかったら・・・と何度も思いました。そしてその原因も全て自分の弱さ故だと思い込んでいたのです。しかし全くそんなことはありませんでした。
嘔吐恐怖症で無かったら良い人生だったかなんてわかりませんし、どうして嘔吐恐怖症になったのか全ての要因が分かる訳もありません。未来と同じで、過去も必要以上に振り返ることなく、ただ「今自分がしたいこと、した方が良いと思ったことをやり続ける」これだけです。
これもまた未来と同じく、瞑想を続けると本当にたくさんの過去と向き合わさせることになります。瞑想をするたびに何度も何度も過去の記憶を受け流していくうちに、「過去の記憶は止まらまいもの、勝手に起きるもの」「過去が正しかったなんて絶対わからない」「不安に捉われず今やるべきことをやっていれば良い」 このような態度がだんだん養われてきます。
私達は今に生きたい

未来や過去に囚われることが少なくなってくると、私達は常に今を生きることになります。
今を生きるとは、常に自分のやりたいこと、すべきことだけに意識が向いている状態です。そして結果が出ても出なくても、落ち込むことなく、すぐにまた次の行動がとれる状態です。
この状態は最も目標が実現しやすい状態だと言われています。感情的にならず、自分のやるべきことだけを淡々とこなせるのでそれはそれは結果が出やすい状態ですよね。これは嘔吐恐怖症に限らず、人生全ての目標達成に言えることです。
この状態になると、認知行動療法の回数や頻度も上がっていくき、やがて認知行動療法が日常の一部として、どんどん馴染んでくることになります。そうなると克服も一気に近づいてきます。
ここまで瞑想とセルフコンパッションをお伝えしてきましたが、これらの技術の最終目標もここにあると言っても良いです。予期不安や落ち込みをどんどん無くしていき、やがて淡々と認知行動療法に取り組める、やがて認知行動療法が努力では無く、日常の一部となる状態を目指してきたのですね。
どんな状況にあっても、私達はただひたすらに今にフォーカスして、自分がやるべきことをしっかりやっていきたいのですね。私達はいつでも今を生きていきたいのです。
もちろん完全にそのような状態になることは難しいです。どうしても過去や未来の不安に囚われてしまうこともあるでしょう。私自身もいつでも今に生きているとは言い難いです。それが人間です。ですが瞑想やセルフコンパッションの最終目標がそこにあることは覚えて頂きたいです。
そして感情的になってしまうたびに、「あ、今を生きなくちゃ」と思い返して頂きたいですね。
今回のワーク
今回のワークはこちらです。ワークに取り組むことで、このコンテンツを受講して自分がこれからするべき行動が具体化されるようになっています。具体化した行動は毎日の習慣としてください。
今回のワークは2枚です。